平成19年4月24日

電波の医療機器等への影響に関する調査結果について


総務省は、平成12年度から電波の医療機器等への影響に関する調査を実施しています。平成18年度は、外部機関に委託し、1.7GHz帯W-CDMA方式携帯電話端末とUHF帯電子タグシステム(ハンディタイプ、据置きタイプ及び機器内蔵タイプ)から植込み型心臓ペースメーカ等の植込み型医療機器へ及ぼす影響を調査しました。
その結果、UHF帯(950MHz帯)電子タグシステムの一部の機種からの電波により植込み型心臓ペースメーカに影響が生じるケースがあることが確認されたため、「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」(以下、「指針」といいます。)を一部改正しました。
1  経緯

総務省では、平成12年度より毎年度「電波の医療機器等への影響に関する調査研究」を実施してきており、平成18年度は、携帯電話(1.7GHz帯)及び電子タグシステム(950MHz帯)が、植込み型ペースメーカに与える影響に関する調査を実施しました。
2  調査結果概要

調査結果では、据置きタイプ電子タグシステム(高出力型950MHz帯パッシブタグシステム)からの電波により、最大「75cm」の離隔距離で植込み型心臓ペースメーカに影響が生じることが判明しました。
また、1.7GHz帯W-CDMA方式携帯電話端末については、現行の指針の範囲内であれば特段問題は無いことを確認しました。
調査結果の詳細については、「別紙」を御覧ください。
3  今後の対応策

調査結果を受け、総務省では以下の対応策をとります。

(1)現在の指針に次の内容を追加・公表
1) 設置場所周辺への進入規制
半径1m以内には、心臓ペースメーカ装着者が近づかないこと。
2) 対象電子タグシステムである旨のステッカを貼付する。

指針の詳細については、「別紙」を御覧ください。

(2)無線局の登録人等に対する注意喚起
当該電子タグシステムを既に設置している者及び今後新たに設置しようとする者に対して注意喚起することを促す。

※ 高出力型950MHz帯パッシブタグシステム
比較的長距離の通信が可能なUHF帯(950MHz帯)の電波を利用する電子タグシステム。
例えば、コンテナやパレットなどに貼付したタグの一括読み取り等のアプリケーションに使用されることが想定される。


【据置きタイプ電子タグシステム(高出力型950MHz帯パッシブタグシステム)例】
参考



・ 医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針
http://www.emcc-info.net/others/keitai.html


【連絡先】
総合通信基盤局 電波部 電波環境課
中間課長補佐、長澤主任
TEL (直通)03−5253−5907
(代表)03−5253−5111
内線 5907
FAX 03−5253−5914
E−mail(注) d-bougo/atmark/soumu.go.jp
注 このアドレスには迷惑メール防止対策を施しています。使用の際は、/atmark/を、@に置きかえてください。

別紙

1  調査対象機器

【無線機器】
1) 1.7GHz帯W-CDMA方式の携帯電話端末   1機種
2) UHF帯(950MHz帯)電子タグシステム   17機種
【植込み型医療機器】
現在使用されている植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器の代表的機種
2  調査結果概要

(1) 1.7GHz帯W-CDMA方式の携帯電話端末の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響
【植込み型心臓ペースメーカ】
最大1cm未満の距離で影響を生じる場合があることが確認されました。

【植込み型除細動器】
影響は確認されませんでした。

注 本調査では、植込み型医療機器へ及ぼす影響が最大となるよう、携帯電話端末の送信出力を最大にするなどの厳しい条件で試験をしており、調査結果(最も遠く離れた位置で影響が確認された距離等)を通常の通信状態における携帯電話方式間の比較に用いることは適当ではありません。

(2) UHF帯電子タグシステムの電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響
1) ハンディタイプ電子タグシステムが植込み型医療機器へ及ぼす影響
影響は確認されませんでした。

2) 据置きタイプ電子タグシステムが植込み型医療機器へ及ぼす影響

【植込み型心臓ペースメーカ】
据置きタイプ電子タグシステムのうち、「高出力型950MHz帯パッシブタグシステム」の一部の機器について、最大75cm の距離で影響を生じる場合があることが確認されました。

【植込み型除細動器】
最大10cmの距離で影響を生じる場合があることが確認されました。

3) 機器内蔵タイプ電子タグシステムが植込み型医療機器へ及ぼす影響
影響は確認されませんでした。

3  各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針の改正

平成18年度に実施した、電波の植込み型医療機器への影響に関する調査の結果に基づき、「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」を別添のとおり改正しました。

【指針の改正概要】
据置きタイプ電子タグシステムのうち、「高出力型950MHz帯パッシブタグシステム」から発射される電波により、植込み型心臓ペースメーカに影響が生じることがないようにするため、以下の指針を追加しました。

据置きタイプ電子タグシステム(高出力型950MHz帯パッシブタグシステム)
(1) 植込み型医療機器の装着者は、据置きタイプ電子タグシステム(高出力型950MHz帯パッシブタグシステム)が設置されている場所及びRFIDステッカ(別紙に記載。)が添付されている場所の半径1m以内には近づかないこと。

(2) 植込み型医療機器の装着者は、体調に何らかの変化があると感じた場合は、担当医に相談すること。

(3) 植込み型医療機器に対する据置きタイプ電子タグシステム(高出力型950MHz帯パッシブタグシステム)の影響を軽減するため、更なる安全性の検討を関係団体で行っていくこと。

用語の説明

* 電子タグシステム(RFID(RADIO FREQUENCY IDENTIFICATION)機器):
電子回路を内蔵したタグとリーダライタとの間で非接触で通信を行うことによりタグのデータを読み書きすることが可能な機器であり、物流、在庫管理や商品等の精算など、様々な分野で利用されている。
また、リーダライタの形状から次のような種類がある。
ゲートタイプ
:リーダライタがゲート状に設置されるもの
ハンディタイプ
:リーダライタを手に持つなど携帯して使用するもの
据置きタイプ
:リーダライタを据え置いて使用するもの
機器内蔵タイプ
:プリンタ等に内蔵して使用するもの