○平成十一年郵政省告示第三百号(電波法施行規則第二十一条の三第二項の規定に基づく無線設備から発射される電波の強度の算出方法及び測定方法)

(平成十一年四月二十七日)

(郵政省告示第三百号)

電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第二十一条の三第二項の規定に基づき、無線設備から発射される電波の強度の算出方法及び測定方法を次のように定め、平成十一年十月一日から施行する。

1 この告示中の計算式等における記号の表す意味は、次のとおりとする。

(1) Eは、電界強度[V/m]とする。

(2) Bは、磁束密度[T]とする。

(3) Hは、磁界強度[A/m]とする。

(4) Sは、電力束密度[mW/cm2]とする。

(5) Pは、空中線入力電力(送信機出力から給電線系の損失及び不整合損を減じたものをいう。以下同じ。)[W]とする。ただし、パルス波の場合は、空中線入力電力の時間平均値とする。

(6) Gは、送信空中線の最大ふく射方向における絶対利得を電力比率で表したものとする。

(7) Rは、算出に係る送信空中線と算出を行う地点との距離[m]とする。

(8) Dは、送信空中線の最大寸法[m]とする。

(9) λは、送信周波数の波長[m]とする。

(10) Kは、反射等に係る補正係数とし、代入する値は次のとおりとする。

ア 地中埋設型基地局(大地面より下の位置にある空中線から電波発射を行う基地局をいう。以下同じ。)以外の場合

(ア) 大地面の反射を考慮する場合

a 送信周波数が76MHz以上の場合 2.56

b 送信周波数が76MHz未満の場合 4

(イ) 水面等大地面以外の反射を考慮する場合 4

(ウ) すべての反射を考慮しない場合 1

イ 地中埋設型基地局であって、送信周波数が700MHzから4600MHzまでの範囲内、かつ、送信空中線が大地面より10cm以上深部にある場合 6

(11) Fは、空中線回転による補正係数とし、代入する値は次のとおりとする。

ア 空中線が回転していない場合 1

イ 空中線が回転している場合

(ア) 距離Rが0.6D2/λを超える場合 θBW/360

θBWは電力半値幅[度]

(イ) 距離Rが0.6D2/λ以下の場合 φ/360

φは距離Rにおける空中線直径の見込み角[度]であり、

φ=2tan-1(D/2R)

とする。

2 電波の強度の換算式

(1) 電力束密度の値から電界強度又は磁界強度の値への換算は、次式を用いる。

S=E2/3770=37.7H2

(2) 磁束密度の値から磁界強度の値への換算は、次式を用いる。

B=μ0H

μ0は、自由空間の透磁率[H/m]とする。

3 電波の強度は、算出に係る送信空中線の位置からその最大輻射方向(最大輻射方向が定まらないときは任意の方向)を基準とする45度間隔の各方位に存在する人が通常、集合し、通行し、その他出入りする場所について、送信空中線から最も近い地点から少なくともλ/10[m]間隔の各地点(以下「算出地点」という。)で算出する。各算出地点においては、大地等の上方10cm(300MHz未満の周波数においては20cm)以上200cm以下の範囲の少なくとも10cm間隔(300MHz未満の周波数においては20cm間隔)となる位置で算出を行い、その最大値を求める。ただし、各算出地点は、送信空中線及び金属物体から10cm以上(300MHz未満の周波数においては20cm以上)離れていなければならない。

4 算出地点付近にビル、鉄塔、金属物体等の建造物が存在し強い反射を生じさせるおそれがある場合は、算出した電波の強度の値に6デシベルを加えること。

5 電波の強度の算出に当たっては、次式により電力束密度の値を求めることとする。ただし、30MHz以下の周波数においては、電界強度の値に換算すること。

S=(PG/40πR2)・K

6 5の項の方法による算出結果が、施行規則別表第2号の3の3に規定する電波の強度の値(以下「基準値」という。)を超える場合であって、送信空中線の電力指向性係数D(θ)が明らかな場合の電波の強度は、次式により電力束密度の値を求めることとする。ただし、30MHz以下の周波数においては、電界強度の値に換算すること。

S=S0・D(θ)・F

S0は、5の項の方法により算出した電力束密度の値とする。

1 D(θ)=0となる方向の送信空中線近傍の電力束密度の値を求める場合は、当該空中線の指向特性を包絡線(指向特性の極大値を結ぶ線)で近似的に表して求めた電力指向性係数を用いて算出する。

2 算出地点が主輻射の外側である場合は、当該地点に対する電力指向性係数については、最大副輻射の方向に対する電力指向性係数を用いて算出してもよい。

3 超短波放送、テレビジョン放送又はマルチメディア放送を行う地上基幹放送局の無線設備において素子を2段以上積み重ねた空中線を使用する場合は、俯角45度以上において垂直面の電力指向性係数を0.1として算出してもよい。

7 5の項及び6の項の方法による算出結果がいずれも基準値を超える場合であって、送信空中線の形式等が次に掲げるもののいずれかに合致するときは、当該空中線における算出方法によることとする。

(1) コーリニアアレイアンテナ(平成30年総務省告示第356号別表第19号第2に規定する基本コード(以下「空中線コード」という。)CLに相当する空中線をいう。)の主輻射内側において、距離Rが0.6D2/λ以下の場合の電波の強度は、次式により電力束密度の値を求めることとする。ただし、30MHz以下の周波数においては、電界強度の値に換算すること。

S=(P/20πRD)・K

注 セクタータイプの空中線については、電力半値幅θBW[度]を用いて次式により算出する。

S=(P/20πRD)(360/θBW)・K

(2) 開口面空中線(空中線コードPA、HO、GG、KG又はCRのいずれかに相当する空中線をいう。)の表面又は主輻射方向における電波の強度は、次の方法により電力束密度の値を求めることとする。ただし、30MHz以下の周波数においては、電界強度の値に換算すること。

ア 空中線表面での電力束密度の値は、次式により算出する。

S=(4P/A)・(1/10)

Aは開口面空中線の開口面積[m2

イ 距離RがD2/4λ以下の場合の電力束密度の値は、次式により算出する。

S=16(ηP/πD2)・(1/10)・K・F

ηは開口面効率

ウ 距離RがD2/4λを超え0.6D2/λ以下の場合の電力束密度の値は、次式により算出する。

S=(D2/4λR)・Snf

Snfは、イにより算出した電力束密度の値とする。

(3) 中波放送用モノポールアンテナ(空中線コードV又はTLに相当する空中線をいう。)の場合であって、空中線からの距離が2D2/λ[m]及びλ/2π[m]のいずれよりも遠い地点までの範囲における電波の強度は、次式により電界強度及び磁界強度の値を求めることとする。

E=√(│Ez2+│Eρ2)

H=│Hφ

ただし、Ez、Eρ及びHφは、別表第1図に示す算出地点P(ρ、φ、z)における各方向成分の電界強度及び磁界強度であり、次式により算出する。

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lは円管の全長[m]、ρは算出地点の径方向の座標[m]、zは算出地点のz座標[m]であり、別表第1図に示すとおりとする。

ωは、角周波数[rad/s]とする。

μ0は、自由空間の透磁率[H/m]とする。

rは、空中線からの距離[m]であり、

r=√(ρ2+(z-ξ)2)

とする。

ξは、空中線上の任意の点におけるz座標[m]とする。

I0は、電流波腹値[A]とする。

kaは、空中線上の伝搬定数[rad/m]とする。

k0は、自由空間における伝搬定数[rad/m]とする。

ltは、頂冠の影響を考慮した空中線の等価的全長[m]とする。

I0、ka、ltは、空中線の長さ、太さ、頂冠の大きさ及び構造等により求める。

(4) カーテンアンテナによる電波の強度は、次のとおり算出する。

ア 算出する電波の強度は、送信空中線から算出地点までの距離及び周波数に応じて次のとおりとする。

(ア) 算出地点が、送信空中線のうち算出地点に対し最も近い箇所から2D2/λ[m]及びλ/2π[m]のいずれよりも遠い場合は、電界強度又は磁界強度(3MHz以下の周波数においては、電界強度のみとする。)

(イ) 算出地点が(ア)以外の場合は、電界強度及び磁界強度

イ 電波の強度の算出にあたっては、各々の放射素子を等価半波長ダイポールとみなし次のとおり行う。

(ア) 各等価半波長ダイポールによる電波の強度を次式により算出し、これらの合成値を求め、別表第2図に示す算出地点P(ρ、φ、z)における電界強度及び磁界強度の値とする。

Ez=(-jk0I/4πωε0){(exp(-jk0r1)/r1)+(exp(-jk0r2)/r2)}

Eρ=(-jk0I/4πωε0ρ){(z+(λ/4))(exp(-jk0r1)/r1)+(z-(λ/4))(exp(-jk0r2)/r2)}

Hφ=(jI/4πρ){exp(-jk0r1)+exp(-jk0r2)}

ωは、角周波数[rad/s]とする。

k0は、自由空間における伝搬定数[rad/m]とする。

ε0は、自由空間の誘電率[F/m]とする。

r1[m]、r2[m]、ρ[m]、z[m]、EZ[V/m]、Eρ[V/m]及びHφ[A/m]は、別表第2図に示すとおりとする。

Iは、等価半波長ダイポールの素子電流であり、空中線電力、素子数及び各素子の入力インピーダンス等により求める。

(イ) 反射器を有する場合又は大地による反射を考慮する場合は、それぞれの場合について等価半波長ダイポールの鏡像を考慮すること。

8 人体が電波に不均一にばく露される場合(大地等から高さ200cmまでの領域中に基準値を超える場所と超えない場所が混在する場合をいう。以下同じ。)の電波の強度については、地中埋設型基地局にあっては大地等から高さ70cmまでの空間的な平均値を、それ以外の場合にあっては大地等から高さ200cmまでの空間的な平均値をそれぞれ求めることとし、次の値を算出する。

(1) 電力束密度については、その平均値

(2) 電界強度及び磁界強度については、次のとおりとする。

ア 施行規則別表第2号の3の3の第1に関しては、それらの自乗平均値の平方根

イ 施行規則別表第2号の3の3の第2に関しては、それらの平均値

(3) 磁束密度については、その平均値

9 5の項から8の項までの方法による算出結果がいずれも基準値を超えるときは、電波の強度を測定しなければならない。ただし、当該算出結果を当該算出地点における電波の強度の値とするときは、測定することを要しない。

10 測定は、次の電波の強度について行う。

(1) 測定地点が、送信空中線のうち最も近い箇所からの距離が2D2/λ[m]及びλ/2π[m]のいずれよりも遠い場合

ア 3MHz以下の周波数においては、電界強度

イ 3MHzを超え30MHz以下の周波数においては、電界強度又は磁界強度

ウ 30MHzを超える周波数においては、電界強度、磁界強度又は電力束密度

(2) 測定地点が(1)以外の場合

ア 1,000MHz以下の周波数においては、電界強度及び磁界強度

イ 1,000MHzを超える周波数においては、電界強度

11 測定には、次に掲げる機器を用いる。

(1) 等方性電磁界プローブ

(2) 周波数非同調型測定系(測定用空中線及び周波数非同調型測定器(広い周波数にわたり電波の強度に対する出力値が均一な応答を示すもの。)をいう。以下同じ。)

(3) 周波数同調型測定系(測定用空中線及び周波数同調型測定器(特定の周波数に同調し、その周波数を中心とした帯域幅内にある電波に主として応答するもの。)をいう。以下同じ。)

12 測定系の条件は次のとおりとする。

(1) 等方性電磁界プローブ

ア 測定対象無線設備が発射可能な周波数の範囲について、プローブを任意の角度に回転し、又は任意の方向へ向けたときの値の変動が3デシベル以内であること。

イ 測定対象無線設備が発射可能な周波数の範囲において、同一強度の電波を測定した場合の値の周波数特性が平坦であること。また、その周波数範囲以外の電波に対する測定器の応答が明らかであること。

ウ 測定対象無線設備が発射可能な周波数の範囲において、正確に測定できる電波の強度の範囲が明らかであること。また、電界プローブは電界以外に応答しないこと。磁界プローブは磁界以外に応答しないこと。

エ 付属のケーブル等は、測定に影響を与えないこと。

オ 応答時間が1秒未満であること。

(2) 周波数同調型測定系及び周波数非同調型測定系

ア 測定器の測定可能周波数範囲、周波数分解能帯域幅(周波数同調型測定系に係る。)、入力感度、検波方式及び最大許容入力が既知であること。

イ 測定対象無線設備から発射される電波の特性に応じて、アンテナ係数が既知である適切な空中線を用いること。

ウ 測定用空中線及び測定器の入力インピーダンスが測定ケーブルと整合していること。

エ 測定器及びケーブルに十分な電磁シールドがなされていること。

オ 測定対象以外の電波の影響を受けないよう必要な措置がなされていること。

13 電波の強度の測定方法

(1) 電波の強度の測定方法は次のとおりとする。

ア 等方性電磁界プローブ又は測定用空中線を測定地点上方10cm(300MHz未満の周波数においては20cm)以上200cm以下の範囲で上下方向に走査し、電波の強度の最大値を測定する。ただし、電磁界プローブ又は測定用空中線は、送信空中線、大地等及び金属物体から10cm以上(300MHz未満の周波数においては20cm以上)離れていること。

イ 電波の強度が時間的に変化する場合は、次により求めた電波の強度の値を測定値とする。

(ア) 電力束密度については、その6分間における平均値

(イ) 電界強度及び磁界強度については、次のとおりとする。

a 施行規則別表第2号の3の3の第1に関しては、それらの6分間における自乗平均値の平方根

b 施行規則別表第2号の3の3の第2に関しては、それらの最大値

(ウ) 磁束密度については、最大値

注 対象無線設備から発射される電波の変調特性から、6分間未満で6分間の平均値が得られる場合は、適宜測定時間を短縮することができる。

(2) 人体が電波に不均一にばく露される場合の電波の強度については、地中埋設型基地局にあっては測定地点上方10cmから70cmまで10cm間隔で、それ以外の場合にあっては測定地点上方10cm(300MHz未満の周波数においては20cm)から200cmまで10cm間隔(300MHz未満の周波数においては20cm間隔)でそれぞれ測定し、8の項の方法に準じてその空間的平均値を求めることとする。

(3) 測定する際には、次の点に留意すること。

ア 測定用空中線の方向及び偏波面は、測定器の指示値が最大になるように配置すること。

イ 測定用空中線と送信空中線のうちいずれか一方が円偏波で他方が直線偏波の場合は、補正値として3デシベルを測定値に加えること。

ウ 電磁界プローブ又は測定用空中線を上下方向に走査するときは、人体や偏波の影響が小さくなるように保持すること。

エ パルス波の測定には、熱電対型の電磁界プローブ、周波数非同調型測定系又はパルスが占有する帯域幅に比べ広い周波数分解能帯域幅を持つ周波数同調型測定系を用いること。

オ 他の無線設備から発射される電波の影響が無視できない場合は、周波数同調型測定系を用いること。

(平25総省告444・平29総省告308・平30総省告351・令3総省告219・令4総省告337・一部改正)

改正文 (平成三〇年一〇月四日総務省告示第三五一号) 抄

平成三十一年一月一日から施行する。

改正文 (令和三年六月三〇日総務省告示第二一九号) 抄

令和三年七月一日から施行する。

改正文 (令和四年九月三〇日総務省告示第三三七号) 抄

電波法及び放送法の一部を改正する法律(令和四年法律第六十三号)の施行の日(令和四年十月一日)から施行する。

別表第1図

7の項(3)に規定する算出式の座標系及び式の記号は下図のとおりとする。

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別表第2図

7の項(4)に規定する算出式の座標系及び式の記号は下図のとおりとする。

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電波法施行規則第二十一条の三第二項の規定に基づく無線設備から発射される電波の強度の算出方...

平成11年4月27日 郵政省告示第300号

(令和4年10月1日施行)

体系情報
第1編 法  令(令和5年1月1日現在)/第11章 情報通信/第2節 
沿革情報
平成11年4月27日 郵政省告示第300号
平成25年12月10日 総務省告示第444号
平成29年9月25日 総務省告示第308号
平成30年10月4日 総務省告示第351号
令和3年6月30日 総務省告示第219号
令和4年9月30日 総務省告示第337号