○平成二十五年総務省告示第三百二十四号(無線設備規則第十四条の二第三項の規定に基づく人体(頭部及び両手を除く。)における比吸収率の測定方法及び人体頭部における比吸収率の測定方法)
(平成二十五年八月二十三日)
(総務省告示第三百二十四号)
無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二第三項の規定に基づき、人体(頭部及び両手を除く。)における比吸収率の測定方法及び人体頭部における比吸収率の測定方法を次のように定め、平成二十六年四月一日から施行する。
なお、平成十三年総務省告示第六百二十八号(人体頭部における比吸収率の測定方法を定める件)は、平成二十六年三月三十一日限り廃止する。
一 この告示中における用語の意味は、次のとおりとする。
1 「制御局シミュレータ」とは、測定対象無線設備の動作を電波によって制御するための装置をいう。
2 「ファントム」とは、実験的に比吸収率を推定するために用いられる擬似的な人体モデルをいう。
3 「ファントム外殻」とは、ファントムの外殻をいう。
4 「ファントム液剤」とは、ファントム外殻に充てんされる液剤をいう。
5 「電界プローブ」とは、ファントム液剤中の電界強度を等方性かつ高分解能で測定する器具をいう。
6 「プローブ走査装置」とは、電界プローブをファントム外殻内で三次元的に移動させる装置をいう。
7 「保持器」とは、測定対象無線設備を固定するための治具をいう。
8 「拡張不確かさ」とは、測定の結果について、合理的に測定値に結び付けられ得る値の分布の九五パーセントを含むと期待される値の範囲を測定値に対する比率で表したものをいう。
9 「RE」とは、人体頭部形状のファントム外殻の表面上の右耳の位置に相当する点をいう。
10 「LE」とは、人体頭部形状のファントム外殻の表面上の左耳の位置に相当する点をいう。
11 「M」とは、人体頭部形状のファントム外殻の表面上の口の位置に相当する点をいう。
12 「ファントム外殻の基準面」とは、RE、LE及びMにより構成される平面をいう。
13 「垂直中央線」とは、測定対象無線設備の受話部の高さでの横幅の中央点と底辺部の横幅の中央点を結ぶ直線をいう。
14 「水平線」とは、測定対象無線設備の前面上にあって受話部の中央を通り垂直中央線に直交する直線をいう。
15 「中央点」とは、垂直中央線と水平線とが交差する点をいう。
16 「複数帯域同時送信」とは、一又は複数の無線設備が複数の送信周波数帯を用いて同時に送信することをいう。
二 人体(側頭部及び両手を除く。)における比吸収率の測定方法
1 比吸収率の測定における環境条件等は、次の条件に適合するものであること。
(一) 環境条件
ア 周囲の温度及びファントム液剤の温度が一八度から二五度までの範囲内であること。
イ 比吸収率の測定を行っている間のファントム液剤の温度変化が(±)二度を超えず、かつ、比吸収率の偏差が(±)五パーセント以内であること。
ウ 周囲雑音による影響が一グラム平均局所比吸収率で一キログラム当たり〇・〇一二ワット以下であること。
エ 制御局シミュレータ、床、位置決め装置等からの反射の影響が測定する比吸収率の三パーセント未満であること。ただし、反射の影響が三パーセントを超える場合であって、当該反射の影響を不確かさに追加したときは、この限りでない。
(二) 不確かさ
比吸収率測定の不確かさについては、一キログラム当たり〇・四ワットから一〇ワットまでの局所最大比吸収率測定値の拡張不確かさが、三〇パーセント以下であること。ただし、当該拡張不確かさが三〇パーセントを超えた場合であって、当該超えた不確かさを考慮した値を得られた比吸収率の値に上乗せしたときは、この限りでない。
2 測定に用いる装置の形状等は、次の条件に適合するものであること。
(一) ファントム外殻
ア 形状は底面が平坦で上部が開いている楕円形であり、寸法は長径六〇〇(±)五ミリメートル、短径四〇〇(±)五ミリメートルのものであること。ただし、底面の外側表面から二五ミリメートルを超えない範囲に測定対象無線設備を設置し次の表の左欄に掲げる周波数を測定する場合は同表右欄に掲げる形状とすることができる。
周波数 | 形状 |
300MHz以上800MHz以下 | 底面が平坦で上部が開いており、長径0.6×λ0メートル、短径0.4×λ0メートルの楕円形を含む形状 |
800MHzを超え6GHz以下 | 底面が平坦で上部が開いており、長径0.225メートル、短径0.15メートルの楕円形を含む形状 |
λ0:測定する周波数の自由空間中の波長(m)
イ 底面の厚さは、二(±)〇・二ミリメートルであり、液剤を充てんした際、底面の中心におけるたわみが二ミリメートル未満であること。
ウ 材質の誘電正接は、〇・〇五以下であり、比誘電率の実部は、三GHz以下の周波数においては五以下、三GHzを超える周波数においては三以上五以下であること。
(二) ファントム液剤
電気的特性は、別表(1)に適合するものであること。
(三) 電界プローブ
ア 検出範囲は、電界強度の計測値から増幅器及び電子計算機を用いて算出される比吸収率の最小検出値が一キログラム当たり〇・〇一ワット以下の値であること。
イ プローブ先端の直径は、二GHz以下の周波数においては八ミリメートル以下、二GHzを超える周波数においては液剤中の当該周波数の波長の三分の一以下であること。
(四) プローブ走査装置
ア 測定範囲に対するプローブ先端の位置決めの精度は、各走査位置について(±)〇・二ミリメートル以下であること。
イ 位置決め分解能は一ミリメートル以下であること。
(五) 保持器
材質の誘電正接は、〇・〇五以下であり、比誘電率の実部は、五以下であること。
3 測定に用いる装置の設定
(一) ファントム外殻及びファントム液剤
ア ファントム液剤は、深さが一五センチメートル以上となるまでファントム外殻に充てんすること。ただし、三GHz以上六GHz以下の周波数を測定する場合であって、液剤の上部表面からの反射による比吸収率の変動が一パーセント以下であるときは、この限りでない。
イ 比吸収率の測定前の二四時間以内にファントム液剤の電気的特性を測定し、その値が別表(1)に規定する値の(±)一〇パーセントの範囲内であることを確認すること。
ウ 比吸収率の算出には、測定した電気的特性を用いること。なお、測定に用いた液剤の電気的特性と目標値との偏差を補正するため、次式により求められる補正係数により比吸収率に補正を施すこと。ただし、補正量が負の場合には、補正を行わないこと。
ΔSAR=CεΔεγ+CσΔσ
Cε=3.456×10-3f3-3.531×10-2f2+7.675×10-2f-0.1860
Cσ=4.479×10-3f3-1.586×10-2f2-0.1972f+0.7717
ΔSAR:補正係数[パーセント]
Δεγ:比誘電率の変化[パーセント]
Δσ:導電率の変化[パーセント]
f:周波数[GHz]
(二) 測定対象無線設備
ア 送信設備は、内部送信機、一体化送信機又は外部で接続する送信機を使用すること。
イ バッテリは、比吸収率の測定前に完全に充電しておき、外部電源との接続は行わないこと。ただし、測定対象無線設備の電源が外部電源のみの場合は、製造者が指定したケーブルを用いて適切な外部電源に接続すること。
ウ 周波数及び空中線電力の制御は、内部試験プログラム又は適切な試験装置を使用して行うこと。
エ 空中線電力は、最大出力値に設定すること。ただし、当該最大出力値の設定が困難な場合は、当該最大出力値より小さい出力で測定し、当該最大出力値における比吸収率に換算することができる。
オ 通常の使用状態において必要な場合以外は、電源等のケーブルを接続しないこと。
4 比吸収率の測定
(一) 測定位置
ア 測定対象無線設備は、製造者等が取扱説明書等において、使用方法を明示している場合は当該使用方法に明示された位置とし、使用方法を明示していない場合は測定対象無線設備の全ての面についてファントム外殻下部にそれぞれ密着させた位置とすること。
イ 測定対象無線設備の大きさがファントム外殻の大きさを超える場合は、測定対象無線設備全体を網羅できるよう、測定位置を変更し複数回の測定を行うこと。このとき、連続する測定における測定対象無線設備の領域を三分の一以上重複させること。
(二) 一般条件
ア 測定対象無線設備の比吸収率は、当該測定対象無線設備を通常使用するときにとり得る全ての状態で測定すること。ただし、一の状態での比吸収率が他の状態での比吸収率を超えないことを国際規格に定められた方法等の合理的な方法により示すことができる場合は、当該一の状態での測定を行わないことができる。
イ 測定対象無線設備の比吸収率は、送信周波数帯の中央付近の周波数を使用して測定すること。ただし、複数の送信モード又は複数の送信周波数帯を持つ無線設備を測定する場合は、それぞれの送信モード及び送信周波数帯で測定を行うこと。
ウ イにより測定した値のうち最大の値及び一キログラム当たり一ワット(四肢における比吸収率を測定する場合にあっては、一キログラム当たり二ワット)以上の値を測定した位置において、送信周波数帯の周波数幅が当該送信周波数帯の中心周波数の一パーセントを超え一〇パーセント以下の場合は当該送信周波数帯の最高周波数及び最低周波数について、送信周波数帯の周波数幅が当該送信周波数帯の中心周波数の一〇パーセントを超える場合は次式により求められる測定数の周波数(当該送信周波数帯の最高周波数及び最低周波数を含み、周波数間隔はできる限り等しくすること。)について比吸収率を測定する。
n=2k+1
n:測定数
k:の小数点以下を切り上げた整数
fc:中心周波数[Hz]
fh:送信周波数帯域内の最高周波数[Hz]
fl:送信周波数帯域内の最低周波数[Hz]
エ イ及びウにより測定した値のうち最大の値を測定対象無線設備の比吸収率の値とする。ただし、拡張不確かさが三〇パーセントを超えた場合は、次式により得られる値を測定対象無線設備の比吸収率とする。
SAR:測定対象無線設備の比吸収率
U(Lm):拡張不確かさ
Lm:イ及びウにより測定した値のうち最大の値
5 複数帯域同時送信時の測定手順
複数帯域同時送信時において、プローブ較正又はファントム液剤の有効な周波数範囲を越える周波数で同時送信する場合は、次のいずれかの方法により測定すること。
(一) 比吸収率の和を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、第二項第四号の方法により比吸収率を測定する。
イ アにより得られた比吸収率について、送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする比吸収率の和の値を求める。
ウ イにより求めた値のうち最大のものを複数帯域同時送信時の比吸収率とする。
(二) 最大の比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、第二項第四号の方法により比吸収率を測定する。
イ アの過程で得られる全ての比吸収率の二次元的な分布のうち、最大となる比吸収率の値及び当該比吸収率の位置を記録する。
ウ イにより記録した位置における送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする比吸収率の和の値を求める。
(三) 三次元計算による比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、第二項第四号の方法により比吸収率を測定する。
イ アの過程で得られる全ての比吸収率の二次元的な分布から空間的な分布を算出し、送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする空間的な分布を足し合わせる。
ウ イにより足し合わせた比吸収率の空間的な分布のうち、最大となる比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする。
(四) 立方体走査による比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、第二項第四号の方法により比吸収率を測定し、当該比吸収率の位置を記録する。
イ アにより記録した位置の全てを含む立方体領域を設定する。
ウ 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、イにより設定した立方体領域内の比吸収率の分布を測定する。立方体領域内の測定間隔は次の表の左欄に掲げる区別に従い、それぞれ同表の右欄に掲げるとおりのものであること。
方向 | 測定間隔 |
ファントム外殻の底面に対して水平方向 | 8ミリメートル以下又は24/fミリメートル以下の間隔のうちいずれか小さい間隔 |
ファントム外殻の底面に対して垂直方向 | 5ミリメートル以下又は8-fミリメートル以下の間隔のうちいずれか小さい間隔 |
f:周波数(GHz)
エ ウにより測定した比吸収率の分布について、送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする比吸収率の分布を足し合わせ、最大となる比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする。
三 人体側頭部における比吸収率の測定方法
1 比吸収率の測定における環境条件等は、次の条件に適合するものであること。
(一) 環境条件
ア 周囲の温度及びファントム液剤の温度が一八度から二五度までの範囲内であること。
イ 比吸収率の測定を行っている間のファントム液剤の温度変化が(±)二度を超えず、かつ、電気的特性の変動が(±)五パーセント以内であること。
ウ 周囲雑音による影響が一〇グラム平均局所比吸収率で一キログラム当たり〇・〇一二ワット以下であること。
エ 制御局シミュレータ、床、位置決め装置等からの反射の影響が、一〇グラム平均局所比吸収率で一キログラム当たり〇・〇一二ワット未満であること。ただし、反射の影響が一〇グラム平均局所比吸収率で一キログラム当たり〇・〇一二ワットを超える場合であって、当該反射の影響を不確かさに追加したときは、この限りでない。
(二) 不確かさ
比吸収率測定の不確かさについては、一キログラム当たり〇・四ワットから一〇ワットまでの局所最大比吸収率測定値の拡張不確かさが、三〇パーセント以下であること。ただし、当該拡張不確かさが三〇パーセントを超えた場合であって、当該超えた不確かさを考慮した値を得られた比吸収率の値に上乗せしたときは、この限りでない。
2 測定に用いる装置の形状等は、次の条件に適合するものであること。
(一) ファントム外殻
ア 形状及び寸法は、国際電気標準会議の規格六二二〇九―一で定めるファントム外殻に対して(±)〇・二ミリメートル未満の公差を保つこと。
イ ファントム外殻の厚さは、携帯電話端末等の投影面のいかなる箇所においても、二(±)〇・二ミリメートルの範囲内であること。ただし、耳及び周辺の延長部分については、ファントム液剤の境界から六(±)〇・二ミリメートルの範囲内であること。
ウ ファントム外殻の表面に位置決めの基準点RE、LE及びMが分かるように印が付されていること。
エ 材質の誘電正接は〇・〇五以下であり、比誘電率の実部は三GHz以下の周波数においては五以下、三GHzを超える周波数においては二以上五以下であること。
(二) ファントム液剤
電気的特性は、別表(2)に適合するものであること。
(三) 電界プローブ
ア 検出範囲は、電界強度の計測値から増幅器及び電子計算機を用いて算出される比吸収率の最小検出値が一キログラム当たり〇・〇一ワット以下、最大検出値が一キログラム当たり一〇〇ワットを超える値であること。
イ プローブ先端の直径は、二GHz以下の周波数においては八ミリメートル以下、二GHzを超える周波数においては液剤中の当該周波数の波長の三分の一以下であること。
(四) プローブ走査装置
ア 測定範囲に対するプローブ先端の位置決めの精度は、各走査位置について(±)〇・二ミリメートル以下であること。
イ 位置決め分解能は一ミリメートル以下であること。
ウ 走査システムは、ファントム外殻上の少なくとも三点を用いてファントム外殻と関連付けられるものとし、これらの点は二〇センチメートル以上離して配置すること。
(五) 保持器
材質の誘電正接は〇・〇五以下であり、比誘電率の実部は五以下であること。
3 測定に用いる装置の設定
(一) ファントム外殻及びファントム液剤
ア ファントム外殻を左右対称に二分割し、RE又はLEが底部となるように設置すること。ファントム液剤は、RE及びLE付近での深さが一五センチメートル以上となるまでファントム外殻に充てんすること(比吸収率の変動が一パーセント以下であるとき又は比吸収率の変動が一パーセントを超え三パーセント未満の場合であって、当該変動を不確かさに追加したときを除く。)。このとき、気泡が生じないようにすること。
イ 比吸収率の測定前の二四時間以内にファントム液剤の電気的特性を測定し、その値が別表(2)に規定する値の(±)一〇パーセントの範囲内であることを確認すること。
ウ 比吸収率の算出には、測定した電気的特性を用いること。なお、測定に用いた液剤の電気的特性と目標値との偏差を補正するため、次式により求められる補正係数により比吸収率に補正を施すこと(ファントム液剤の電気的特性の値が別表(2)に規定する値の(±)五パーセントの範囲内の場合を除く。)。ただし、補正量が負の場合には、補正を行わないこと。
ΔSAR=CεΔεγ+CσΔσ
Cε=3.456×10-3f3-3.531×10-2f2+7.675×10-2f-0.1860
Cσ=4.479×10-3f3-1.586×10-2f2-0.1972f+0.7717
ΔSAR:補正係数[パーセント]
Δεγ:比誘電率の変化[パーセント]
Δσ:導電率の変化[パーセント]
f:周波数[GHz]
(二) 測定対象無線設備
ア 送信設備は、内部送信機を使用すること。
イ 空中線、バッテリ及び付属品は、測定対象無線設備の製造者が指定したものを使用すること。
ウ バッテリは、比吸収率の測定前に完全に充電しておき、外部電源との接続は行わないこと。
エ 周波数及び空中線電力の制御は、内部試験プログラム又は適切な試験装置を使用して行うこと。
オ 空中線電力は、人体側頭部のそばで使用する場合の最大出力値に設定すること。ただし、当該最大出力値の設定が困難な場合は、それより低出力で測定し、最大出力時の比吸収率に換算することができる。
カ 音声とデータが混在する通信モードについては、測定対象無線設備を人体側頭部の側で使用する場合で生じ得る最大空中線電力で測定を行うこと。
キ 送信信号は、擬似的なベースバンド信号を用い、測定対象無線設備で使用される通信方式の信号形式に従った連続送信とすること。
4 比吸収率の測定
(一) 測定位置
測定対象無線設備は、ファントム外殻の左右両側について、次のア及びイに規定する位置で測定すること。
ア 頬に接する位置
ファントム外殻の基準面内に垂直中央線を保ち、かつ、垂直中央線及び水平線を含む平面をファントム外殻の基準面と直交させ、中央点がREとLEを結ぶ直線上にある状態で、測定対象無線設備の中央点付近がファントム外殻の耳に接し、かつ、測定対象無線設備前面のいずれかの点がファントム外殻の頬に接する位置とすること。ただし、中央点が可能な限りファントム外殻の耳に近づく位置にあること。
なお、測定対象無線設備がファントム外殻の耳及び頬に接しない場合は、測定対象無線設備の中央点付近がファントム外殻の耳に接した状態で、測定対象無線設備前面のいずれかの点がファントム外殻の頬に最も近づく位置とすること。
イ 傾斜させた位置
アの位置から測定対象無線設備の向きを変えずに、中央点がREとLEを結ぶ直線上にある状態で、基準面内に測定対象無線設備の垂直中央線を保ちながら、中央点を中心点として、送話部中央点がファントム外殻の頬から離れる方向に測定対象無線設備を一五度回転させた位置とすること。この場合において、中央点が可能な限りファントム外殻の耳に近づく位置にあること。
なお、測定対象無線設備の回転の角度が一五度未満であって、測定対象無線設備の一箇所がファントム外殻の耳に接触し、同様に他の部分がファントム外殻に接触する場合は、その位置とすること。
(二) 一般条件
ア 測定対象無線設備の比吸収率は、当該測定対象無線設備を通常使用するときにとり得る全ての状態で測定すること。ただし、一の状態での比吸収率が他の状態での比吸収率を超えないことを国際規格に定められた方法等の合理的な方法により示すことができる場合は、当該一の状態での測定を行わないことができる。
イ 測定対象無線設備をファントム外殻の左右両側に置いて、(一)のア及びイに規定するそれぞれの位置に固定し、測定対象無線設備の各送信帯域の中央付近の周波数を使用して比吸収率を測定すること。ただし、複数の送信モード又は複数の送信周波数帯を持つ無線設備を測定する場合は、それぞれの送信モード及び送信周波数帯で測定を行うこと。
ウ イにより測定した値のうち最大の値及び一キログラム当たり一ワット以上の値を測定した位置において、送信周波数帯の周波数幅が当該送信周波数帯の中心周波数の一パーセントを超え一〇パーセント以下の場合は当該送信周波数帯の最高周波数及び最低周波数について、送信周波数帯の周波数幅が当該送信周波数帯の中心周波数の一〇パーセントを超える場合は次式により求められる測定数の周波数(当該送信周波数帯の最高周波数及び最低周波数を含み、周波数間隔はできる限り等しくすること。)について比吸収率を測定すること。
n=2k+1
n:測定数
k:の小数点以下を切り上げた整数
fc:中心周波数[Hz]
fh:送信周波数帯域内の最高周波数[Hz]
fl:送信周波数帯域内の最低周波数[Hz]
エ 測定対象無線設備が収納可能な空中線を持つ場合には、当該空中線を伸ばした状態と収納した状態の両方でイ及びウの測定を行うこと。
オ イからエまでにより得られた値のうち最大の値を測定対象無線設備の比吸収率の値とする。ただし、拡張不確かさが三〇パーセントを超えた場合は、次式により得られる値を測定対象無線設備の比吸収率とする。
SAR:測定対象無線設備の比吸収率
U(Lm):拡張不確かさ
Lm:イからエまでにより測定した値のうち最大の値
5 複数帯域同時送信時の測定手順
複数帯域同時送信時において、プローブ較正又はファントム液剤の有効な周波数範囲を超える周波数で同時送信する場合は、次のいずれかの方法により測定すること。
(一) 比吸収率の和を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、前号の方法により比吸収率を測定する。
イ アにより得られた比吸収率について、送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする比吸収率の和の値を求める。
ウ イにより求めた値のうち最大のものを複数帯域同時送信時の比吸収率とする。
(二) 最大の比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、前号の方法により比吸収率を測定する。
イ アの過程で得られる全ての比吸収率の二次元的な分布のうち、最大となる比吸収率の値及び当該比吸収率の位置を記録する。
ウ イにより記録した位置における送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする比吸収率の和の値を求める。
(三) 三次元計算による比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、前号の方法により比吸収率を測定する。
イ アの過程で得られる全ての比吸収率の二次元的な分布から空間的な分布を算出し、送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする空間的な分布を足し合わせる。
ウ イにより足し合わせた比吸収率の空間的な分布のうち、最大となる比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする。
(四) 立方体走査による比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする方法
ア 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、前号の方法により比吸収率を測定し、当該比吸収率の位置を記録する。
イ アにより記録した位置の全てを含む立方体領域を設定する。
ウ 複数帯域同時送信時において同時に送信される複数の送信周波数帯それぞれについて、イにより設定した立方体領域内の比吸収率の分布を測定する。この場合において、立方体領域内の測定間隔は次の表の左欄に掲げる方向に従い、それぞれ同表の右欄に掲げるとおりのものであること。
方向 | 測定間隔 |
ファントム外殻の底面に対して水平方向 | 8ミリメートル以下又は24/fミリメートル以下の間隔のうちいずれか小さい間隔 |
ファントム外殻の底面に対して垂直方向 | 5ミリメートル以下又は8-fミリメートル以下の間隔のうちいずれか小さい間隔 |
f:周波数(GHz)
エ ウにより測定した比吸収率の分布について、送信周波数帯に係る試験条件以外を同じくする比吸収率の分布を足し合わせ、最大となる比吸収率を複数帯域同時送信時の比吸収率とする。
(平二七総省告四二四・令元総省告三〇・一部改正)
別表(1) ファントム液剤の電気的特性
周波数(MHz) | 比誘電率の実部 | 導電率(S/m) |
30 | 55.0 | 0.75 |
150 | 52.3 | 0.76 |
300 | 45.3 | 0.87 |
450 | 43.5 | 0.87 |
750 | 41.9 | 0.89 |
835 | 41.5 | 0.90 |
900 | 41.5 | 0.97 |
1450 | 40.5 | 1.20 |
1800 | 40.0 | 1.40 |
1900 | 40.0 | 1.40 |
1950 | 40.0 | 1.40 |
2000 | 40.0 | 1.40 |
2100 | 39.8 | 1.49 |
2450 | 39.2 | 1.80 |
2600 | 39.0 | 1.96 |
3000 | 38.5 | 2.40 |
3500 | 37.9 | 2.91 |
4000 | 37.4 | 3.43 |
4500 | 36.8 | 3.94 |
5000 | 36.2 | 4.45 |
5200 | 36.0 | 4.66 |
5400 | 35.8 | 4.86 |
5600 | 35.5 | 5.07 |
5800 | 35.3 | 5.27 |
6000 | 35.1 | 5.48 |
注 数値間の値については線形補間により求めること。
別表(2) ファントム液剤の電気的特性
(平27総省告424・全改)
周波数(MHz) | 比誘電率の実部 | 導電率(S/m) |
300 | 45.3 | 0.87 |
450 | 43.5 | 0.87 |
835 | 41.5 | 0.90 |
900 | 41.5 | 0.97 |
1450 | 40.5 | 1.20 |
1800 | 40.0 | 1.40 |
1900 | 40.0 | 1.40 |
1950 | 40.0 | 1.40 |
2000 | 40.0 | 1.40 |
2450 | 39.2 | 1.80 |
3000 | 38.5 | 2.40 |
3500 | 37.9 | 2.91 |
4000 | 37.4 | 3.43 |
4500 | 36.8 | 3.94 |
5000 | 36.2 | 4.45 |
5200 | 36.0 | 4.66 |
5400 | 35.8 | 4.86 |
5600 | 35.5 | 5.07 |
5800 | 35.3 | 5.27 |
6000 | 35.1 | 5.48 |
注 数値間の値については線形補間により求めること。