○令和元年総務省告示第三十三号(無線設備規則第十四条の二第四項の規定に基づく人体(両手を除く。)における入射電力密度の測定方法)
(令和元年五月二十日)
(総務省告示第三十三号)
無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二第四項の規定に基づき、人体(両手を除く。)における入射電力密度の測定方法を次のように定める。
一 この告示中における用語の意味は、次のとおりとする。
1 「制御局シミュレータ」とは、測定対象無線設備の動作を電波によって制御するための装置をいう。
2 「ファントム」とは、実験的に入射電力密度を推定するために用いられる仮想的な人体モデルをいう。
3 「ファントム外殻」とは、ファントムの外殻をいう。
4 「電磁界プローブ」とは、電界強度、磁界強度又はその両方を測定する器具をいう。
5 「プローブ走査装置」とは、電磁界プローブをファントム周辺で移動させる装置をいう。
6 「保持器」とは、測定対象無線設備を固定するための治具をいう。
7 「拡張不確かさ」とは、測定の結果について、合理的に測定値に結び付けられ得る値の分布の九五パーセントを含むと期待される値の範囲を測定値に対する比率で表したものをいう。
8 「RE」とは、人体頭部形状のファントム外殻の表面上の右耳の位置に相当する点をいう。
9 「LE」とは、人体頭部形状のファントム外殻の表面上の左耳の位置に相当する点をいう。
10 「M」とは、人体頭部形状のファントム外殻の表面上の口の位置に相当する点をいう。
11 「ファントム外殻の基準面」とは、RE、LE及びMにより構成される平面をいう。
12 「垂直中央線」とは、測定対象無線設備の受話部の高さでの横幅の中央点と底辺部の横幅の中央点を結ぶ直線をいう。
13 「水平線」とは、測定対象無線設備の前面上にあって受話部の中央を通り垂直中央線に直交する直線をいう。
14 「中央点」とは、垂直中央線と水平線とが交差する点をいう。
二 人体(側頭部及び両手を除く。)における入射電力密度の測定方法
1 入射電力密度の測定における環境条件等は、次の条件に適合するものであること。
(一) 環境条件
ア 周囲の温度が、一八度から二五度までの範囲内であること。
イ 周囲雑音による影響が、一平方センチメートル当たり〇・〇四ミリワット以下であること。
ウ 制御局シミュレータ、床、プローブ走査装置等からの反射の影響が、測定する入射電力密度の〇・二デシベル未満であること。
(二) 不確かさ
入射電力密度測定の不確かさについては、一平方センチメートル当たり〇・四ミリワットから四ミリワットまでの入射電力密度測定値の拡張不確かさが、二デシベル以下であること。ただし、当該拡張不確かさが二デシベルを超えた場合であって、当該超えた拡張不確かさを考慮した値を得られた入射電力密度の値に上乗せしたときは、この限りでない。
2 測定に用いる装置の形状等は、次の条件に適合するものであること。
(一) ファントム外殻
ア 形状は平坦で楕円形であり、寸法は長径六〇〇ミリメートル、短径四〇〇ミリメートルのものであること。
イ ファントム外殻の厚さは、二ミリメートルであること。
(二) プローブ走査装置
測定範囲に対するプローブ先端の位置決めの精度は、各走査位置について(±)〇・二ミリメートル以下であること。
(三) 保持器
材質の誘電正接は〇・〇〇五以下であり、比誘電率の実部は一・二以下であること。
3 測定に用いる装置の設定
(一) 送信設備は、内部送信機、一体化送信機又は外部で接続する送信機を使用すること。
(二) バッテリは、入射電力密度の測定前に完全に充電しておき、通常の使用状態において必要な場合以外は、外部電源との接続は行わないこと。ただし、外部電源との接続をした場合であっても、入射電力密度に影響を与えないことをあらかじめ確認しているときは、この限りではない。
(三) 測定対象無線設備の電源が外部電源のみの場合は、製造者が指定したケーブルを用いて適切な外部電源に接続すること。
(四) 周波数及び空中線電力の制御は、内部試験プログラム又は制御局シミュレータを使用して行うこと。
(五) 空中線電力は、最大出力値に設定すること。ただし、当該最大出力値の設定が困難な場合は、当該最大出力値より小さい出力で測定し、当該最大出力値における入射電力密度に換算することができる。
4 入射電力密度の測定
(一) 測定位置
測定対象無線設備の測定位置は、製造者等が取扱説明書等において使用方法を明示している場合は当該使用方法に明示された位置とし、使用方法を明示していない場合は測定対象無線設備の全ての面についてファントム外殻にそれぞれ密着させた位置とすること。
(二) 一般条件
ア 測定対象無線設備の入射電力密度は、当該測定対象無線設備を通常使用するときに取り得る全ての状態で測定すること。ただし、一の状態での入射電力密度が他の状態での入射電力密度を超えないことを国際規格に定められた方法等の合理的な方法により示すことができる場合は、当該一の状態での測定を行わないことができる。
イ 測定対象無線設備の入射電力密度は、送信周波数帯の中央付近の周波数を使用して測定すること。ただし、複数の送信モード又は複数の送信周波数帯を持つ無線設備を測定する場合は、それぞれの送信モード及び送信周波数帯で測定を行うこと。
ウ イにより測定した値のうち最大の値及び一平方センチメートル当たり一ミリワット以上の値を測定した位置において、送信周波数帯の周波数幅が当該送信周波数帯の中心周波数の一パーセントを超える場合は、次の式により求められる測定数の周波数(当該送信周波数帯の最高周波数及び最低周波数を含み、周波数間隔はできる限り等しくすること。)について入射電力密度を測定すること。
n=2k+1
n:測定数
k:10×(fh-fl)/fcの小数点以下を切り上げた整数
fh:送信周波数帯域内の最高周波数〔Hz〕
fl:送信周波数帯域内の最低周波数〔Hz〕
fc:中心周波数〔Hz〕
エ イ及びウにより測定した値のうち最大の値を、測定対象無線設備の入射電力密度とする。ただし、拡張不確かさが二デシベルを超えた場合は、次の式により得られる値を測定対象無線設備の入射電力密度とする。
S=Lm×(1+Umeas-Ulim)
S:測定対象無線設備の入射電力密度
Lm:イ及びウにより測定した値のうち最大の値
Umeas:拡張不確かさ(デシベル表示の場合は真数に変換した数値)
Ulim:拡張不確かさの規定値(デシベル表示の場合は真数に変換した数値)
三 人体側頭部における入射電力密度の測定方法
1 入射電力密度の測定における環境条件等は、次の条件に適合するものであること。
(一) 環境条件
ア 周囲の温度が、一八度から二五度までの範囲内であること。
イ 周囲雑音による影響が、一平方センチメートル当たり〇・〇四ミリワット以下であること。
ウ 制御局シミュレータ、床、プローブ走査装置等からの反射の影響が、測定する入射電力密度の〇・二デシベル未満であること。
(二) 不確かさ
入射電力密度測定の不確かさについては、一平方センチメートル当たり〇・四ミリワットから四ミリワットまでの入射電力密度測定値の拡張不確かさが、二デシベル以下であること。ただし、当該拡張不確かさが二デシベルを超えた場合であって、当該超えた拡張不確かさを考慮した値を得られた入射電力密度の値に上乗せしたときは、この限りでない。
2 測定に用いる装置の形状等は、次の条件に適合するものであること。
(一) ファントム外殻
ア 形状及び寸法は、国際電気標準会議の規格六二二〇九―一で定めるファントム外殻のものとすること。
イ ファントム外殻の厚さは、携帯電話端末等の投影される面のいかなる箇所においても、二ミリメートルであること。
(二) プローブ走査装置
測定範囲に対するプローブ先端の位置決めの精度は、各走査位置について(±)〇・二ミリメートル以下であること。
(三) 保持器
材質の誘電正接は〇・〇〇五以下であり、比誘電率の実部は一・二以下であること。
3 測定に用いる装置の設定
(一) ファントム外殻
ファントム外殻は、左右対称に二分割し設置すること。
(二) 測定対象無線設備
ア 送信設備は、内部送信機、一体化送信機又は外部で接続する送信機を使用すること。
イ バッテリは、入射電力密度の測定前に完全に充電しておき、通常の使用状態において必要な場合以外は、外部電源との接続は行わないこと。ただし、外部電源との接続をした場合であっても、入射電力密度に影響を与えないことをあらかじめ確認しているときは、この限りではない。
ウ 測定対象無線設備の電源が外部電源のみの場合は、製造者が指定したケーブルを用いて適切な外部電源に接続すること。
エ 周波数及び空中線電力の制御は、内部試験プログラム又は制御局シミュレータを使用して行うこと。
オ 空中線電力は、最大出力値に設定すること。ただし、当該最大出力値の設定が困難な場合は、当該最大出力値より小さい出力で測定し、当該最大出力値における入射電力密度に換算することができる。
4 入射電力密度の測定
(一) 測定位置
測定対象無線設備は、ファントム外殻の左右両側について、次のア及びイに規定する位置で測定すること。
ア 頬に接する位置
ファントム外殻の基準面内に垂直中央線を保ち、かつ、垂直中央線及び水平線を含む平面をファントム外殻の基準面と直交させ、中央点がREとLEを結ぶ直線上にある状態で、測定対象無線設備の中央点付近がファントム外殻の耳に接し、かつ、測定対象無線設備前面のいずれかの点がファントム外殻の頬に接する位置とすること。この場合において、中央点が可能な限りファントム外殻の耳に近づく位置にあること。
なお、測定対象無線設備がファントム外殻の耳及び頬に接しない場合は、測定対象無線設備の中央点付近がファントム外殻の耳に接した状態で、測定対象無線設備前面のいずれかの点がファントム外殻の頬に最も近づく位置とすること。
イ 傾斜させた位置
アの位置から測定対象無線設備の向きを変えずに、中央点がREとLEを結ぶ直線上にある状態で、基準面内に測定対象無線設備の垂直中央線を保ちながら、中央点を中心点として、送話部中央点がファントム外殻の頬から離れる方向に測定対象無線設備を一五度回転させた位置とすること。この場合において、中央点が可能な限りファントム外殻の耳に近づく位置にあること。
なお、測定対象無線設備の回転の角度が一五度未満であって、測定対象無線設備の一箇所がファントム外殻の耳に接触し、同様に他の部分がファントム外殻に接触する場合は、その位置とすること。
(二) 一般条件
ア 測定対象無線設備の入射電力密度は、当該測定対象無線設備を通常使用するときに取り得る全ての状態で測定すること。ただし、一の状態での入射電力密度が他の状態での入射電力密度を超えないことを国際規格に定められた方法等の合理的な方法により示すことができる場合は、当該一の状態での測定を行わないことができる。
イ 測定対象無線設備の入射電力密度は、送信周波数帯の中央付近の周波数を使用して測定すること。ただし、複数の送信モード又は複数の送信周波数帯を持つ無線設備を測定する場合は、それぞれの送信モード及び送信周波数帯で測定を行うこと。
ウ イにより測定した値のうち最大の値及び一平方センチメートル当たり一ミリワット以上の値を測定した位置において、送信周波数帯の周波数幅が当該送信周波数帯の中心周波数の一パーセントを超える場合は、次の式により求められる測定数の周波数(当該送信周波数帯の最高周波数及び最低周波数を含み、周波数間隔はできる限り等しくすること。)について入射電力密度を測定すること。
n=2k+1
n:測定数
k:10×(fh-fl)/fcの小数点以下を切り上げた整数
fh:送信周波数帯域内の最高周波数〔Hz〕
fl:送信周波数帯域内の最低周波数〔Hz〕
fc:中心周波数〔Hz〕
エ イ及びウにより測定した値のうち最大の値を、測定対象無線設備の入射電力密度とする。ただし、拡張不確かさが二デシベルを超えた場合は、次の式により得られる値を測定対象無線設備の入射電力密度とする。
S=Lm×(1+Umeas-Ulim)
S:測定対象無線設備の入射電力密度
Lm:イ及びウにより測定した値のうち最大の値
Umeas:拡張不確かさ(デシベル表示の場合は真数に変換した数値)
Ulim:拡張不確かさの規定値(デシベル表示の場合は真数に変換した数値)