発表日  : 4月24日(木)

タイトル :  4/24付:安心して電波を利用できる環境を整備するために





    −「電波利用における人体防護の在り方」に関する答申−

 郵政省は、本日、電気通信技術審議会(会長 西澤 潤一 前東北大学総長)
から、「電波利用における人体防護の在り方」(諮問第89号 平成8年(19
96年)11月)に関し、今後の電波防護指針の取扱い、携帯電話端末等身体の
極めて近くで使用される機器に関して適用される具体的な指針等についての答申
を受けました。
 答申の概要は、以下のとおりです。
 1 背景 
 電波の人体への影響に関しては、平成2年6月25日に電気通信技術審議会か
ら答申を受けている「電波利用における人体の防護指針」(以下、略称として
「電波防護指針」という。)により、人体に影響を及ぼさない電波の強さの指針
値等が示されている。
 しかし、その後の携帯電話の急速な普及に代表されるように、身体の極めて近
くで使用される無線機器が増えており、これに関する電波防護指針をより分かり
やすく具体化することが求められている。また、電波防護に関する最近の研究成
果、海外における動向等を踏まえ、電波防護指針の取扱い、今後の研究項目を明
らかにすることも求められている。
 2 答申の概要 
 上記の状況を踏まえ、本答申では、身体の極めて近くで使用する無線機器に対
する電波防護指針及びその適用のために必要な測定法・推定法、今後の電波防護
指針の取扱い及び電波の人体への影響に関する今後の研究項目等について取りま
とめられています。

 (1)人体が電波に局所的にさらされる場合等の指針の制定
    携帯電話端末等のように身体の極めて近くで無線機器を使用する場合、
   人体は局所的に電波を受けることとなる。この場合の電波防護指針を具体
   化するため、新たに電波のエネルギーの身体への吸収量に関する指針であ
   る「局所吸収指針」を制定し、携帯電話端末等の指針として今まで使われ
   ていた「低電力放射源に関する指針」は、局所吸収指針に包含されること
   から廃止する。
    新しい電波防護指針の構成と局所吸収指針の内容は、次のとおり。

             電波防護指針の構成
電波防護指針の構成図
注1:基礎指針:電波の生体作用に基づく、人体の安全性評価の基準となる指針
注2:管理指針:基礎指針を満たすための実測できる物理量(電界強度等)で示
        した指針
注3:SAR(Specific Absorption Rate:比吸収率)
   生体の単位質量当たりの組織に単位時間に吸収される電波エネルギーの量
注4:管理環境:電波のばく露に対して適切な管理が行える環境(職業的な環境
        等に相当)
注5:一般環境:管理環境に該当しない環境(一般の居住環境等に相当)


             局所吸収指針の内容

適用範囲:本指針は、周波数100kHzから3GHzまでに適用する。
対  象:身体に近接して使用する小型無線機等に適用できる。
     主に、周波数100kHz以上300MHz未満で、電磁放射源との距離20cm以内
        周波数300MHz以上3GHz未満で、電磁放射源との距離10cm以内
  管理環境
一般環境
全身平均SAR 0.4 W/kg
0.08 W/kg
局所SAR
任意の組織10g当たり
  10 W/kg
  20 W/kg(四肢)
任意の組織10g当たり
   2 W/kg
   4 W/kg(四肢)
接触電流
接触ハザードが防止されていな
い場合
100kHzから100MHzまでの周波数
    100 mA
接触ハザードが防止されていな
い場合
100kHzから100MHzまでの周波数
     45 mA
                           (任意の6分間平均値)

   なお、現在一般的に使用されている携帯電話端末等は、専門家の研究によ
  れば局所吸収指針を満たすとされている。しかしながら、電波の局所吸収量
  の正確な測定のためには、我が国を含む各国標準化機関で現在取り組んでい
  るSAR測定法の標準化作業の結論を待つ必要がある。

 (2)電波防護に関する規制の導入
    最新の信頼できる学術的知見に基づく防護措置の確実な実施、新しく開
   発する電波利用システムの安全性の担保、諸外国における動向との整合性
   の確保、国民への安心感の醸成等を考慮すると、無線局等の電波利用施設
   から発射される電波からの人体防護に関し、一般国民の安全性を考慮した
   規制とすることが望ましい。規制に当たっては、電波防護指針及び本答申
   の電波防護指針値に基づくべきである。
    ただし、身体の極めて近くで使用する携帯型等の無線機器については、
   測定法あるいは推定法の確立した段階で、各国における規制の実態を考慮
   したものとすべきである。

 (3)今後研究を進めることが必要な項目
    ドシメトリ(ばく露評価)及びばく露システムの研究に関しては、電波
   防護指針への適合性評価法を確立し、生物学的実験の精度向上を図るため、
   局所SAR測定法や高精度ばく露装置の研究・開発を進めることが必要で
   ある。
    また、生物学的研究に関しては、動物実験等を含む各種の研究が行われ
   ているが、電波防護指針を下回るレベルの電波で、がんを含めて健康への
   悪影響が生じるとの科学的な証拠はないというのが、国際機関等の専門家
   の見解である。しかしながら、本件は人体の健康にかかわる視点も含んで
   いるので、今後も動物実験等による遺伝子・がん・免疫系・神経系への影
   響等に関する研究を推進する必要がある。
    さらに、悪性腫瘍等をはじめとする健康影響に関する疫学調査を行う場
   合には、医療カルテ公開、患者の履歴情報の問題等もあり、実施に当たっ
   ては、長期にわたる疾病把握を行える研究計画を十分検討し、体制の整備
   を図った上で行う必要がある。

 3 今後の行政施策 
 郵政省としては、本答申を踏まえ、安心して電波を利用できる環境を整備する
ために必要な施策の検討を開始するとともに、研究の推進等に努めていく予定で
す。


             連絡先:電気通信局電波部監視監理課技術管理室
                   (担当:島崎補佐、白石係長)
                    電話:03−3504−4900