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UWB無線システムの屋外利用時の運用制限について

1.UWB無線システムとは

(UWB無線システムの概要)

UWB無線システムは、平均電力-41.3dBm/MHz以下という一般の電子機器等が発生する雑音レベルよりもはるかに低い電力を非常に広い帯域に拡散させて通信を行う点が特徴※1となっています。また、その広帯域性により、高精度な位置検知・測距が可能であることから、近距離の測位システムやセンサー、レーダーの用途で利用されています。

※1 ITU勧告において、帯域幅が500MHz以上または帯域幅率(帯域幅を中心周波数で割った値)が0.2以上とされていますが、通信方式などの明確な定義はありません。

(UWB無線システムの周波数帯別の特徴)

UWB無線システムにおいて利用される周波数帯は、マイクロ波帯においては3.4~4.8GHz(ローバンド)及び7.25~10.25GHz(ハイバンド)、準ミリ波帯では、衝突防止用車載レーダー用途で使用されている24.25~29GHzがあります。我が国においてはハイバンドの低帯域(7.25-9.0GHz)は屋外での利用が認められています(ローバンド及びハイバンドの高帯域(9.0~10.25GHz)は屋外での利用は禁止されています。)。

周波数帯 3.4~4.8GHz
(ローバンド)
7.25~10.25GHz(ハイバンド) 24.25-29GHz
7.25-9.0GHz
(低帯域)
9.0-10.25GHz
(高帯域)
用途 データ伝送 データ伝送
無線標定
データ伝送 無線標定
(車載利用のみ)
屋外利用 不可 不可
干渉軽減装置
伝送速度の制限 50Mbps以上
停波の機能 要(※2)

※2 7.587~8.4GHzの周波数のみを使用する無線装置の場合は不要。

(UWB無線システムの屋外利用)

我が国では、ハイバンドの低帯域(7.25-9.0GHz)は屋外での利用が認められていますが、7.587~8.4GHzの周波数のみを使用する無線装置の場合を除き、一部の場所では屋外での運用が制限される場合があります。

2. UWB無線システムを利用したアプリケーション

(UWB無線システムのアプリケーションの事例)

UWB無線システムは、データ通信だけでなく、位置情報取得や無線測位の用途での利用も可能であり、幅広いアプリケーションで利用されています。特に近年では、UWB無線システムのセンサーネットワーク等での利用が注目され、日本においてもモバイル端末や自動車等への搭載を想定した屋内外での利用ニーズが高まっています。

用途 主なアプリケーション 主な無線機器(※3)
データ伝送
  • 高速データ転送
  • 宅内ストリーミング伝送
  • パソコン
  • パソコン周辺機器
  • ホームサーバー
  • スマートスピーカー 等
位置情報取得
(リアルタイム位置測位システム)
(屋内・構内)
  • 工場内等でのモノのトレーシングや従業員のコンタクトトレーシング
  • スポーツ競技における運動データ取得
(屋外)
  • スマートキー
  • スマートパーキング
  • 紛失防止タグ
  • UWBタグ
  • スマートフォン
  • ウェアラブル端末
  • スマートキー 等
無線測位
(レーダー)
  • 地中探査レーダー
  • 医療用イメージング
  • 非破壊検査
  • 人感センサー
  • レーダー装置
  • 医療機器
  • ヘルスケア機器(心拍測定等)
  • 自動車(車内組み込み)

※3 日本国内において販売されている製品への搭載が確認されてないものも含む。

3.UWB無線システムの屋外利用時の運用制限

(UWB無線システムの運用制限が必要となるケース)

UWB無線システムは様々な無線システムとの共用が前提となっており、屋外での利用にあたっては、一部の共用無線システムの無線設備の近くで利用すると電波干渉を与える可能性があることから、対象となる共用無線システムが存在する施設の敷地内では運用制限が必要となります。

下表の無線システムは、情報通信審議会における検討の結果※4、UWB無線システムからの電波干渉を回避するための一定の離隔距離を確保するために、運用制限が必要とされたものです。これらの無線システムが設置された場所の敷地内では、その設備の運用者等からUWB無線システムの電波を停止するような措置が求められます。

共用無線システム 無線システム概要 使用する周波数帯 主な設置場所
電波天文の受信設備 天体が放射する極めて微弱な電波を高感度に受信することにより、宇宙の誕生と進化、星や銀河の成り立ち、惑星の形成や宇宙と生命との関連などを研究するための装置。人工電波による妨害に非常に脆弱なため、電波法に基づいて国が特段の保護措置をとっている場合がある。 6.7GHz帯
10.6GHz帯
電波天文台は、無線局等が発する電波による妨害を可能な限り避けるため、街の中心から離れた比較的人口が少ない場所に設置される。
(施設一覧)
https://prc.nao.ac.jp/freqras/ant.htmlリンク先コンテンツを別ウィンドウで開きます
宇宙研究業務(深宇宙)の地球局
(D/L)
惑星やその衛星、小惑星や彗星などの小天体に接近して観測を行う深宇宙探査機との交信を行う地上局。数10m~60m級の大口径アンテナを利用する。8.4GHz帯は人工衛星局から地球局へのダウンリンクで使用されている。 8.4GHz帯
  • 長野県臼田宇宙空間観測所
    (美笹深宇宙探査用地上局を含む)
  • 鹿児島県内之浦宇宙空間観測所
    (施設一覧)
    https://fanfun.jaxa.jp/visit/リンク先コンテンツを別ウィンドウで開きます
VLBI測地システム 天体からの電波を利用して受信アンテナの位置を測ることで、地球上の正確な位置(緯度・経度)や自転の様子、地面の変動などの観測を行うシステム。数m~数十mのパラボラアンテナを利用する。 7.78 - 9.08 GHz
航空精測進入レーダー
(PAR)
管制官が着陸のため最終進入する航空機に対し、進入コースからのずれ(水平方向および垂直方向)、着陸点までの距離を探知し、航空機を誘導するために利用するレーダーシステム。 9.0-9.2 GHz PARを導入している空港の敷地内(滑走路及びその周辺)
航空機搭載気象レーダー 航行中に航路上の雷雲などの悪天候領域を探知するため、また離着陸時にウインドシアを探知するために利用するレーダーシステム。 9.3 - 9.5 GHz 航空機(港内及び滑走路走行中にレーダーを使用)
気象レーダー
(気象業務用)
無情報のパルス信号を上空に送信し、広範囲の雨、雪などの降水粒子からの反射波を受信することにより、雨や雪の分布や強さ、風の観測等を行い、防災情報に活用するためのレーダーシステム。 9.7 - 9.8 GHz

※4 マイクロ波帯を用いたUWB無線システムの屋外利用の周波数帯域拡張に係る技術的条件(令和2年2月16日情報通信審議会一部答申)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000496.htmlリンク先コンテンツを別ウィンドウで開きます

(UWB無線システムの停波の方法)

UWB無線システム(屋外において7.25-9.0GHzの周波数を発する機能を有するものに限る。)は、電波の発射を停止する機能を搭載することが制度上義務付けられています※5。電波の発射を停止する方法は無線機器によって異なりますが、無線機器の電源を切る、スマートフォンの機内モード等の電波を発射できない設定にする、などにより可能となります。具体的な機器の操作方法については、取扱説明書をご参照ください。

※5 7.587~8.4GHzの周波数のみを使用する無線装置の場合は不要。

参考

電波産業会(ARIB)では、ARIB標準規格において、「UWB無線システムの運用の手引き」を策定し、取扱説明書、カタログ、パンフレット、ホームページ、現品表示などの媒体を通じ、屋外利用の運用制限に関する注意書きや電波干渉の事前の防止策をとるための業界共通のガイドラインを定めています。

また、総務省ではUWB無線システムとの共用システムの免許人様向けに施設利用者等への注意喚起を行っていただくための専用ポスターを作成しています。

担当:総合通信基盤局電波部移動通信課新世代移動通信システム推進室