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920MHz帯の無線局の利用

1 用語について

表 1 の左欄に掲げる用語等については右欄のとおり略して記載することとします。

表 1 用語の略記
用語等 略記
電波法施行規則 施行規則
無線設備規則 設備規則
特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則 証明規則
等価等方輻射電力 EIRP
○時間 ○h
○秒 ○s
○ミリ秒 ○ms
○マイクロ秒 ○µs
昭和○年 S○
平成○年 H○
令和○年 R○
郵政省告示第○号 郵告○
総務省告示第○号 総告○

また表 2 の左欄に掲げる用語の説明は右欄のとおりです。

表 2 用語の定義
用語 説明
単位チャネル 916MHz~928MHzの周波数のうち、916MHzに200kHzの整数倍を加えた周波数を中心周波数とする帯域幅200kHzのチャネル及び928.15MHz~929.65MHzのうち、928.15MHzに100kHzの整数倍を加えた周波数を中心周波数とする帯域幅100kHzのチャネル。
無線チャネル 送信時に使用する単位チャネル。複数の連続する単位チャネルを同時に使用する場合は同時に使用する全ての単位チャネル。
RFID Radio Frequency IDentificationの略記。電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする無線システムのことを指す。
LPWA Low Power Wide Areaの略記。低消費電力で長距離のデータ通信を可能とする無線通信技術を使用する無線システムのことを指す。
キャリアセンス 送信の前に、決められた時間中、無線チャネルの帯域内において閾値以上の他の無線局からの電波を受信した場合に、他の無線局が使用されていると判断し、送信を取りやめる混信回避のための機能。
FH 周波数ホッピング(Frequency Hopping)の略記。一定の周期で周波数を切替えることで他の無線機との干渉を軽減させる方式のことを指す。
LDC ローデューティサイクル(Low Duty Cycle)の略記。ある一定時間に占める送信時間を制限することで、他の無線機との干渉を軽減させる方式のことを指す。
○dBm 1ミリワットを0dBmとしてデシベル単位に換算した電力値。

2 920MHz帯無線局の分類

2.1全体の体系

920MHz帯を利用した無線システムは、大きくパッシブ系(電子タグ系)とアクティブ系(センサー通信系)、無線電力伝送用(WPT)に分けられます。


図 1 920MHz帯無線局の全体の体系図

図 2 920MHz帯の周波数割当て
表 3 免許局・登録局・特定小電力無線局の違い
根拠法令 条件 免許局との違い
免許局 電波法第4条
登録局 電波法第4条ただし書き及び同条第4号並びに同法第27条の21第1項 施行規則第16条に掲げる無線局
施行規則第17条に掲げる規格
施行規則第18条に掲げる開設区域
無線局検査不要
申請から0.5か月程度で開設可能
適合表示無線設備を使用することが必須
特定小電力無線局 電波法第4条ただし書き及び同条第3号並びに施行規則第6条第4項第2号 施行規則第6条第4項第2号掲げる条件に適合するもの 利用に際して申請不要
適合表示無線設備を使用することが必須

2.2パッシブ系:移動体識別用(電子タグ系)

質問器(リーダー)から電子タグに向けて発射された電波の反射波をリーダーで読み取り、タグ内のデータを取得する無線システム(RFID)等で利用されます。タグ自体が自発的に電波を発射する場合又は反射波を増幅して反射する場合はアクティブ系に分類されます。(4.4参照。)
「移動体識別」については、設備規則第3条第16号において、「無線設備が、応答のための装置(無線設備が発射する電波により作動し、その受信電力の全部又は一部を同一周波数帯の電波として発射する装置をいう。以下同じ。)から発射された電波を受信することにより行う移動体の識別」と定義されています。
空中線電力等の条件により技術基準等が以下の表のとおり異なります。

表 4 移動体識別用無線局の技術基準等
局種 周波数 1 空中線電力 技術基準 特定無線設備の規格
免許局 構内無線局
陸上移動局
916.7MHz~920.9MHz 1W以下 構内無線局:設備規則第49条の9第1号
陸上移動局:設備規則第49条の34第2項
証明規則第2条第1項第6号
登録局 証明規則第2条第1項第6号の2 2
特定小電力無線局 916.7MHz~923.5MHz 250mW以下 3 設備規則第49条の14第6号 証明規則第2条第1項第8号
  1. 1.
     パッシブ系の単位チャネルは図2に示すとおり。
  2. 2.
     送信時間制限装置及びキャリアセンスを備え付けることが必須。
  3. 3.
     EIRPが27dBm以下の場合は500mW以下。(H1郵告42参照。)
表 5 移動体識別用無線局の送信時間制限装置・キャリアセンスの基準
局種 送信時間 送信休止時間 キャリアセンス受信時間 キャリアセンス閾値 参照告示 備考
免許局・登録局 構内無線局 4s以内 50ms以上 5ms以上 -74dBm R4総告164 免許局はキャリアセンスが必須ではない
送信時間制限装置が不要となる条件 4あり
陸上移動局 H31総告123
特定小電力無線局 0.4s以内
1hにおける送信時間の総和が360s以下
2ms以上 128μs以上 -64dBm 5
-74dBm 6
-74dBmから超過分を減じた値 7
H1郵告49 使用する周波数に条件あり 8
4s以内 50ms以上 5ms以上
  1. 4.
     中心周波数を916.8MHz、918MHz、919.2MHz又は920.4MHzとする単位チャネルをのみを使用する場合。
  2. 5.
     空中線電力が10mW以下の場合。
  3. 6.
     空中線電力が10mW~250mWの場合。
  4. 7.
     空中線電力が250mWを超える場合。
  5. 8.
     920.5MHz~923.5MHzの周波数を使用するものに限る。

2.3アクティブ系:テレメータ用・テレコントロール用及びデータ伝送用(センサー通信系)

主にセンサーネットワークやスマートメーターなど比較的低送信頻度、小容量のデータを取り扱う消費電力が少なくライフサイクルの長い無線システム(LPWA)で多く利用されています。
空中線電力等の条件により技術基準等が以下の表のとおり異なります。

表 6 テレメータ用・テレコントロール用及びデータ伝送用無線局の技術基準等
局種 周波数 9 空中線電力 技術基準 特定無線設備の規格
免許局 陸上移動局 920.5MHz~923.5MHz 250mW以下 設備規則第49条の34第1項 証明規則第2条第1項第4号の7
登録局
特定小電力無線局 中出力型(キャリアセンス要):
920.5MHz~928.1MHz
20mW以下 10 設備規則第49条の14第7号(同号ニただし書きに該当するものを除く。) 証明規則第2条第1項第8号
中出力型(FH):
920.5MHz~925.1MHz
設備規則第49条の14第7号(同号ニただし書き(1)に該当するものに限る。)
中出力型(LDC):
920.5MHz~923.5MHz
設備規則第49条の14第7号(同号ニただし書き(2)に該当するものに限る。)
低出力型:
915.9MHz~929.7MHz
1mW 11 設備規則第49条の14第8号
  1. 9.
     アクティブ系の単位チャネルは図2に示すとおり。
  2. 10.
     EIRPが16dBm以下の場合は250mW以下。(H1郵告42参照。)
  3. 11.
     EIRPが3dBm以下の場合は250mW以下。(H1郵告42参照。)
表 7 テレメータ用・テレコントロール用及びデータ伝送用無線局の送信時間制限装置・キャリアセンスの基準
局種 送信時間 送信休止時間 キャリアセンス受信時間 キャリアセンス閾値 参照告示 備考
免許局・登録局 陸上移動局 4s以内 50ms以上 5ms以上 -80dBm H31総告123
特定小電力無線局 0.4s以内
任意の1hにおける送信時間の総和が360s以下
2ms以上 128μs以上 -80dBm 12 H1郵告49 中出力型(キャリアセンス要)
4s以内 50ms以上 5ms以上 中出力型(キャリアセンス要) 13
同一周波数の電波の送信が0.4s以内
任意の1hにおける送信時間の総和が720s以下
単位チャネル当たりの送信時間の総和が36s以下
送信後、同一周波数の次の電波の送信を行うまで4s以上休止 中出力型(FH)
任意の1hにおける送信時間の総和が36s以下 中出力型(LDC)
0.4s以内
任意の1hにおける送信時間の総和が360s以下
2ms以上 128us以上 -80dBm 14 低出力型
(キャリアセンス有)
4s以内 50ms以上 5ms以上 低出力型
(キャリアセンス有) 15
0.1s以内
任意の1hにおける送信時間の総和が3.6s以下
0.1s以上 低出力型
(キャリアセンス無) 16
50ms以内 50ms以上 低出力型
(キャリアセンス無) 17
  1. 12.
     空中線電力が20mWを超える場合はその分を減じる。
  2. 13.
     920.5MHz~923.5MHzの周波数を使用するものに限る。
  3. 14.
     空中線電力が20mWを超える場合はその分を減じる。
  4. 15.
     920.5MHz~923.5MHzの周波数を使用するものに限る。
  5. 16.
     915.9MHz~928.1MHzの周波数を使用するものに限る。
  6. 17.
     928.1MHz~929.7MHzの周波数を使用するものに限る。

2.4無線電力伝送用(WPT)

無線電力伝送用の無線局は免許局のみ認められている。R4総告163を満たすことが条件となるため、基本的に屋内において利用されます。技術基準等は以下の表のとおりです。

表 8 無線電力伝送用無線局の技術基準等
局種 周波数 18 空中線電力 技術基準 特定無線設備の規格
免許局 構内無線局 917.9MHz~919.3MHz 1W以下 設備規則第49条の9第1号 証明規則第2条第1項第6号の2の2 19
  1. 18.
     無線電力伝送用の構内無線局の単位チャネルは図2中のパッシブ系の単位チャネルうち、チャネルの中心周波数が918MHzのもの及び919.2MHzのものと同じ。
  2. 19.
     送信時間制限装置を備え付けないものについては特定無線設備の対象外。
表 9 無線電力伝送用無線局の送信時間制限装置の基準
局種 送信時間 送信休止時間 参照告示 備考
免許局 構内無線局 4s以内 50ms以上 R4総告164 無人環境 20で使用する場合は送信時間制限装置の備え付けは不要
  1. 20.
     R4総告164において、「取扱者のほか容易に出入りすることができないように措置されている空間」と規定されている。

3 920MHz帯無線局の送信チャネルについて

920MHz帯無線局は基本として単位チャネルを送信チャネルとして電波を発射しますが、条件によっては連続する単位チャネルを複数同時に使用して送信チャネルとすることができます。
2.1で示した分類毎の同時使用可能な単位チャネル数は以下の表のとおりです。

表 10 分類毎の同時使用可能な単位チャネル数
分類 送信チャネルとして同時に使用可能な単位チャネル数
パッシブ系免許局・登録局 1~3 21
パッシブ系特定小電力無線局 1~5 22
アクティブ系免許局・登録局 1~5
アクティブ系特定小電力無線局(中出力型(キャリアセンス要)) 1~20
アクティブ系特定小電力無線局(中出力型(FH))
アクティブ系特定小電力無線局(中出力型(LDC))
アクティブ系特定小電力無線局(低出力型) 1~5
無線電力伝送用構内無線局
  1. 21.
     2以上の単位チャネルを同時に送信チャネルとして使用できる周波数は920.3MHz~920.9MHzのみ。
  2. 22.
     2以上の単位チャネルを同時に送信チャネルとして使用できる周波数は920.3MHz~923.5MHzのみ。

4 920MHz帯無線局に係るその他制度関係について

4.1無線従事者の選任について

920MHz帯の免許局及び登録局については、適合表示無線設備を使用する限りにおいては、一部を除き施行規則第33条 23の無線従事者の資格を要しない簡易な操作を行う無線局に該当するため、基本的には無線従事者の選任は不要ですが、陸上移動局のうち、キャリアセンスを備え付けていないものについては適合表示無線設備であっても、当該簡易な操作を行う無線局には該当しないため、開設時に総合無線通信士、陸上無線技術士又は陸上特殊無線技士(国内電信級陸上特殊無線技士を除く)を有した者を無線従事者として選任することが必要となります。

  1. 23.
     陸上移動局については第6号(5)(総務大臣が別に告示する無線局(H2郵告第第241号参照))に該当。構内無線局については第6号(4)に該当。特定小電力無線局については第1号に該当。

4.2電波利用料について

免許局、登録局ともに1局当たり年間400円の電波利用料が費用としてかかります。(令和4年10月1日現在。電波利用料には改定がございますので、詳細は電波利用ホームページ等をご確認下さい。)特定小電力無線局については電波利用料の支払いは不要です。

4.3移動体識別用の構内無線局の申請の特例について

移動体識別用の構内無線局については、S61郵告381において、無線局の運用の様態が「機能上一体となって一の通信系を構成するもの」である場合、2以上の送信設備を含めて単一の無線局として申請することが可能となっています。
ここで、「機能上一体となって一の通信系を構成」とは、一の構内の同一のネットワーク(一の通信系)において個々の送信設備が無線局の目的遂行のために一体となって運用されており、単一の送信設備のみでは無線局の目的を遂行することができない不可分性を有していることを示しています。

複数の送信設備を単一の無線局として申請する場合は、申請書類として、「機能上一体となって一の通信系を構成するもの」であることを示す構成図等の追加の資料の提出が必要になります。

4.4パッシブタグの要件

設備規則第3条第16号において、移動体識別は「無線設備が、応答のための装置(無線設備が発射する電波により作動し、その受信電力の全部又は一部を同一周波数帯の電波として発射する装置をいう。(中略))から発射された電波を受信することにより行う移動体の識別をいう。」とされており、リーダーが発した電波を受信することで、当該受信する電波の電力以下の電波を同一周波数帯の電波として発射するものがパッシブタグとなります。電源装置等を用いて受信した電波を増幅する場合はパッシブ系ではなく、アクティブ系として取り扱います。ただし、パッシブタグに付属するセンサーや揮発性メモリなどに給電を行うために電池などの電源を有する場合であっても、無線系の電子回路に給電を行うことが無ければパッシブ系として取り扱うことができます。

担当:総合通信基盤局電波部移動通信課