1.ドローン等に用いられる無線設備について
ロボットを利用する際には、その操縦や、画像伝送のために、電波を発射する無線設備が広く利用されています。これらの無線設備を日本国内で使用する場合は、電波法令に基づき、無線局の免許を受ける必要があります。ただし、他の無線通信に妨害を与えないように、周波数や一定の無線設備の技術基準に適合する小電力の無線局等は免許を受ける必要はありません。
特に、上空で電波を利用する無人航空機等(以下「ドローン等」という。)の利用ニーズが近年高まっています。
国内でドローン等での使用が想定される主な無線通信システムは、以下のとおりです。
分類 | 無線局免許 | 周波数帯 | 最大送信出力 | 主な利用形態 | 備考 | 無線従事者資格 |
---|---|---|---|---|---|---|
免許又は登録を要しない無線局 | 不要 | 73MHz帯等 | ※1 | 操縦用 | ラジコン用微弱無線局 | 不要 |
不要※2 | 920MHz帯 | 20mW | 操縦用 | 920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用特定小電力無線局 | ||
2.4GHz帯 | 10mW/MHz※3 | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 2.4GHz帯小電力データ通信システム | |||
携帯局 | 要※4 | 169MHz帯 | 10mW※5 | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 無人移動体画像伝送システム(平成28年8月に制度整備) | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 |
2.4GHz帯 | 1W | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | ||||
5.7GHz帯 | 1W | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | ||||
その他 | 不要※6 | 800MHz帯等 | ※7 | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 携帯電話(4G、5G) | 不要 |
- ※1:
500mの距離において、電界強度が200μV/m以下のもの。
- ※2:
技術基準適合証明等(技術基準適合証明及び工事設計認証)を受けた適合表示無線設備であることが必要。
- ※3:
変調方式や占有周波数帯幅によって出力の上限は異なる。
- ※4:
運用に際しては、運用調整を行うこと。
- ※5:
地上から電波発射を行う無線局の場合は最大1W。
- ※6:
携帯電話事業者の包括免許により運用。
- ※7:
基地局によって制御される。
外国製の無線機については、外国製無線機もあわせてご確認ください。
2.制度概要
電波を利用するには、国内の技術基準に合致した無線設備を使用し、原則、総務大臣の免許や登録を受け、無線局を開設することが必要です。(微弱な無線局や一部の小電力の無線局は除く。)
なお、近年、ドローン等においてFPV(First Person View)といった画像伝送が用いられることがあります。(「4.アマチュア無線局について」もご参照ください。)
無人移動体画像伝送システムについて
無人移動体画像伝送システムは、一般業務用(産業の用に供するものに限る。)として、平成28年8月に制度化されました。これは、高画質映像の長距離伝送などを可能とする2.4GHz帯及び5.7GHz帯等の周波数を新たに確保したものです。
特に、無人移動体画像伝送システムの無線局を運用する際には、限られた周波数資源を共用し、各々が必要な通信を確保するため、運用者間で使用する周波数等の運用調整を行う必要があります。また、使用する周波数は、同一及び隣接する周波数帯を他の無線局が使用しているため、これらの無線局の運用に配慮した運用が必要となります。(無線LANが使用していない高い周波数から使用する。周辺にDSRC(ETC等)関係の無線局が無いことを確認する等)
現在、円滑な運用調整を行うため、関係業界が主体となって運用調整団体が整備され、具体的な運用調整が行われており、無線局の免許申請時には運用調整に関する資料を提出いただく必要があります。
運用場所 | |||
---|---|---|---|
屋外のみで運用 屋内・屋外で運用 |
屋内のみで運用 | ||
空中線電力 | 15mW超 | 運用調整団体の加入証明書(写し)等(※1) | 運用調整団体の加入証明書(写し)等(※1) |
15mW以下 | 運用調整団体の加入証明書(写し)等(※1) | 運用調整団体の加入証明書(写し)等(※1) ただし、 5.7GHz帯の無線局に限り、屋内限定・低出力無線局用の資料も可(※2) |
- (※1)
運用調整団体の加入証明書(写し)等は、有効期限内のものを無線局の新規開設時だけでなく、再免許申請時にも提出願います。
- (※2)
5.7GHz帯の屋内運用限定かつ低出力(15mW以下)の無線局は他の無線局への影響が限定的なため、免許人自らが運用場所において運用開始前に他の無線局に混信妨害等を与えないよう運用調整を行うとともに、運用中も監視者等の配置により継続して混信妨害を与えないよう運用調整を行う旨を示す資料の提出が可能です。(ただし、今後、運用形態の変化等により他の無線局への混信発生が予見される場合は、必要な書類が変更される可能性があります。)
なお、免許申請に当たっては、移動範囲に「屋内に限る」旨の記載を行なってください。(例えば、「関東総合通信局管内、その上空(屋内に限る)」等) -
5.7GHz帯の低出力(15mW以下)無線局で、屋外では運用調整団体の運用調整、屋内では免許人自らが使用場所において運用調整を行う場合は、「運用調整団体の加入証明書(写し)等」及び「5.7GHz帯・屋内限定・低出力無線局用の資料」の両方の資料を提出願います。
また、無線局免許について詳しくお知りになりたい場合は、管轄地域を確認の上、お近くの総合通信局等にご確認ください。
2.4GHz帯や5.7GHz帯では、上図に記載の無線局の他に、無線電力伝送用構内無線局が屋内で使用される場合があります。無線電力伝送用構内無線局から干渉を受ける可能性がある場合は、ワイヤレス電力伝送運用調整協議会(JWPT)に調整を求めることが可能です。
3.免許又は登録を要しない無線局について
発射する電波が極めて微弱な無線局や、一定の技術的条件に適合する無線設備を使用する小電力の無線局については、無線局の免許又は登録が不要です。
ドローン等には、ラジコン用の微弱無線局や小電力データ通信システム(無線LAN等)の一部が主として用いられています。
- 微弱無線局(ラジコン用)
ラジコン等に用いられる微弱無線局は、無線設備から500メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が200μV/m以下のものとして、周波数などが総務省告示で定められています。無線局免許や無線従事者資格が不要であり、主に、産業用の農薬散布ラジコンヘリ等で用いられています。
空中線電力が1W以下で、特定の用途に使用される一定の技術基準が定められた無線局については免許又は登録が不要です。例えば、Wi-FiやBluetooth等の小電力データ通信システムの無線局等がこれにあたります。
これらの小電力の無線局は、無線局免許や無線従事者資格が不要ですが、技術基準適合証明等(技術基準適合証明又は工事設計認証)を受けた適合表示無線設備でなければなりません。
1.9GHz帯デジタルコードレス電話(TD-LTE方式(sXGP方式))については、一の構内での利用に限り、上空で利用することができます。
4.アマチュア無線局について
上記の無線局のほか、ドローン等にアマチュア無線が用いられることがあります。この場合は、アマチュア無線技士の資格及びアマチュア無線局免許が必要です。
なお、アマチュア無線とは、金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な興味により行う自己訓練、通信及び技術研究のための無線通信です。そのため、アマチュア無線を使用したドローンを利益を目的とした仕事などの業務に利用することはできません。
また、FPV等では5GHz帯のアマチュア無線が用いられることがありますが、5GHz帯のアマチュア無線は、周波数割当計画上、二次業務に割り当てられています。そのため、同一帯域を使用する他の一次業務の無線局の運用に妨害を与えないように運用しなければなりません。特に、 5.7GHz帯では無人移動体画像伝送システムが用いられているほか、5.8GHz帯は、DSRCシステムに割り当てられており、主として高速道路のETCシステムや駐車場管理等に用いられていますので、それら付近での使用は避ける等、運用の際には適切な措置を執る必要があります。
5.携帯電話等を上空で利用する場合について
携帯電話等の移動通信システムは、地上での利用を前提に設計されていることから、その上空での利用については、通信品質の安定性や地上の携帯電話等の利用への影響が懸念されています。
こうした状況を踏まえ、実用化試験局の免許を受ける、又は、一定の条件下で利用することで、既設の無線局等の運用等に支障を与えないことを条件に、携帯電話等を無人航空機等に搭載して利用できるよう、制度を整備しています。
詳しくは、以下のホームページをご確認ください。