1.研究開発の目的
携帯電話などの無線局の急速な増加や新たな無線システムの高速化に伴い、周波数の需要が増大しており、携帯電話等の通信量は3年で2.4倍も増加しています。このため、電波の割当てや周波数の再編を行う総務省として、周波数のひっ迫状況を緩和し、新たな周波数需要に的確に対応するために、平成17年度より「電波資源拡大のための研究開発」を実施し、周波数を効率的に利用する技術、周波数の共同利用を促進する技術又は高い周波数への移行を促進する技術について研究開発を推進しています。

2.研究開発の概要
電波資源拡大のために、以下のような技術の研究開発を行います。
- 周波数を効率的に利用する技術
現在割り当てられている無線システムに必要な周波数帯域を圧縮することにより、電波の効率的な利用を図る技術
- 周波数の共同利用を促進する技術
電波が稠密に使われている周波数帯において、既存無線システムに影響を及ぼすことなく、周波数の共用を可能とする技術
- 高い周波数への移行を促進する技術
6GHz以下の周波数のひっ迫状況を低減するために、6GHz以下で使用されている無線システムを比較的ひっ迫の程度が低い高マイクロ波帯や未利用周波数帯(ミリ波帯)へ移行するための技術
3.研究開発案件の一覧表
- 次世代移動通信システム(5G等)
研究開発課題 令和元年度
実施額
(億円)第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発 17.1 5Gの普及・展開のための基盤技術に関する研究開発 - 次世代衛星通信システム
研究開発課題 令和元年度
実施額
(億円)Ka帯広帯域デジタルビームフォーミング機能による周波数利用高効率化技術の研究開発 19.5 ニーズに合わせて通信容量や利用地域を柔軟に変更可能なハイスループット衛星通信システム技術の研究開発 - 電磁環境・測定システム
研究開発課題 令和元年度
実施額
(億円)不要電波の高分解能計測・解析技術を活用したノイズ抑制技術の研究開発 6.3 IoT/5G時代の様々な電波環境に対応した最適通信方式選択技術の研究開発 大電力ワイヤレス電力伝送システムの漏えい電磁界低減化技術の研究開発 - ミリ波・テラヘルツ波システム
研究開発課題 令和元年度
実施額
(億円)集積電子デバイスによる大容量映像の非圧縮低電力無線伝送技術の研究開発 11.1 テラヘルツセンシング基盤技術の研究開発 ミリ波帯における大容量伝送を実現するOAMモード多重伝送技術の研究開発 - 安心・安全ワイヤレス分野
- ワイヤレスIoT分野
研究開発課題 令和元年度
実施額
(億円)5.7GHz帯における高効率周波数利用技術の研究開発 17.0 高ノイズ環境における周波数共用のための適応メディアアクセス制御に関する研究開発 狭空間における周波数稠密利用のための周波数有効利用技術の研究開発 IoT機器増大に対応した有無線最適制御型電波有効利用基盤技術の研究開発 ※実施額については予定
研究開発の適正な実施のための評価体制
研究開発の実施に当たり、透明性・実効性を高めるため、外部専門家・外部有識者から構成される「電波利用料による研究開発等の評価に関する会合」(以下「評価会」という。)を開催し、各研究開発案件について、以下の評価を行います。
- 予算要求段階における技術的観点からの評価と技術的な評価の結果に基づく総合評価の2段階評価(事前評価)
- 公募実施の前段階における、研究開発を実施する上での基本的な計画である基本計画書の妥当性について評価(基本計画書の評価)
- 提案された研究開発提案を採択する段階における、技術的観点からの評価と技術的な評価の結果に基づく総合評価の2段階評価(採択評価)
- 研究開発の実施段階において、効率的かつ適切に実施されているかどうかについての評価(継続評価)
- 研究開発の終了後に十分な成果が得られたかどうかについての評価(終了評価)
- 終了評価において必要と認めた案件について、追跡調査による状況調査を行い、さらに研究開発終了後一定期間を経過後に研究開発成果の波及効果や活用状況等を評価(追跡評価)
また、その評価結果をフィードバックすることにより、今後の電波資源拡大のための研究開発のより効率的な実施に努めます。
一つの研究開発課題に対する評価の流れは以下のとおりです。

また、各評価における具体的な評価の観点は以下のとおりです。
<事前評価>
- 研究開発を実施する必要があるかどうか
- 研究開発期間等が妥当であるかどうか
- 技術課題、達成目標等が明確に把握されているかどうか
- 研究開発内容等に対して適切な予算額となっているかどうか
- 以上を踏まえた上で、総合的に見て有益と考えられるかどうか
<基本計画書の評価>
- 周波数の有効利用との関係があるかどうか
- 研究開発の技術課題等の妥当性及び要素技術間の相関があるかどうか
- 到達目標等の設定は妥当かどうか
<採択評価>
- 研究開発手法が目的を達成するために妥当かどうか
- 研究開発手法が技術的に優れているか
- 研究開発の実施計画が効率的に組まれているか
- 研究開発の実施体制が適切かどうか
- 他の研究開発への発展性、研究開発実績、標準化への取り組み等はどうか
- 以上を踏まえた上で、総合的に見て有益と考えられるかどうか
<継続評価>
- 年度当初の計画に従って有効に研究開発が進捗しており、成果があがっているか
- 次年度の実施計画、体制及び予算計画が、最終的な成果を得るために適切なものとなっているかどうか
- 標準化、相互接続性の観点及び知的財産に関する取り組みの観点から妥当なものであるかどうか
- 以上を踏まえた上で、総合的に見て有益と考えられるかどうか
<終了評価>
- 事前評価時に設定した達成目標や基本計画書に記載された到達目標は達成されたか
- 実施体制が妥当であったかどうか。予算は効率的に使用されたかどうか
- 標準化等への取り組みや実用化等の目処の観点から妥当かどうか
- 以上を踏まえた上で、総合的に見て有益と考えられるかどうか
<追跡評価>
- 研究開発の成果が、電波の再配分等周波数のひっ迫対策に対して有効となっているかどうか
- 経済的、社会的な波及効果(知的財産権、標準化等への取り組みや実用化等への効果)の観点から見て妥当かどうか
- 論文、学会発表への取り組みの観点から見て妥当かどうか
- 以上を踏まえた上で、総合的に見て有益であったと考えられるかどうか
評価会の構成員一覧(五十音順、敬称略)
氏名 | 所属 |
---|---|
井家上 哲史 | 明治大学 専任教授 |
岩波 保則 | 名古屋工業大学大学院 教授 |
大柴 小枝子 | 京都工芸繊維大学大学院 教授 |
笹瀬 巌 | 慶應義塾大学 教授 |
橋本 修 | 青山学院大学 副学長・教授 |
長谷山 美紀 | 北海道大学大学院 教授 |
秦 正治 | 岡山大学大学院 名誉教授 |
村口 正弘 | 東京理科大学 教授 |
守倉 正博 | 京都大学大学院 教授 |
山尾 泰 | 電気通信大学 教授・センター長 |
過去の評価会での議事概要
- 事前評価
- 基本計画書の評価
- 平成27年度(平成27年2月2日開催)
- 平成28年度(平成28年2月2日開催)
- 平成29年度(平成28年12月8日及び平成29年2月8日開催)
- 平成30年度(平成30年1月30日開催)
- 令和元年度(平成31年1月28日開催)
- 採択評価
- 継続評価
- 終了評価
- 追跡評価
4.研究開発終了案件の成果
- 平成23年度終了課題(第5回成果発表会(平成24年11月30日開催)において報告)
- 平成24年度終了課題(第6回成果発表会(平成25年11月29日開催)において報告)
- 平成25年度終了課題(第7回成果発表会(平成26年12月12日開催)において報告)
- 平成26年度終了課題(第8回成果発表会(平成27年11月27日開催)において報告)
- 平成27年度終了課題(第9回成果発表会(平成28年12月2日開催)において報告)
- 平成28年度終了課題(第10回成果発表会(平成29年5月26日開催)において報告)
- 平成29年度終了課題(第11回成果発表会(平成30年5月25日開催)において報告)
- 平成30年度終了課題(第12回成果発表会(令和元年5月29日開催)において報告)
担当:総合通信基盤局電波部電波政策課