1.周波数の国際協調利用促進事業の目的
我が国では、無線局の急増により周波数がひっ迫している状況にあり、これを緩和するため、我が国の周波数ひっ迫事情に見合った電波のより能率的な利用に資する技術を導入する観点から、我が国の無線技術の国際標準化に取り組んでいます。
しかしながら、複数の技術基準が国際標準として併存し、国際標準技術の導入に当たって標準間での競争が生じる場合には、我が国の技術を国際標準化するだけでは我が国の電波の能率的な利用の確保が担保されない恐れがあり、そのような場合、国際的な優位性を確保した上で国際標準として策定することが重要であり、そのために、当該無線技術等の国際的な普及促進を図ることが必要です。
我が国の周波数事情に合う周波数利用効率の高い無線技術について、国際的な優位性を持って国際標準として策定されるようにするため、当該無線技術等の国際的な普及促進を図る「周波数の国際協調利用促進事業」を平成29年度から実施しています。
2.周波数の国際協調利用促進事業の概要
我が国の周波数利用効率の高い無線技術等について、国際的な優位性を持って国際標準として策定されるようにするため、海外における実証実験、技術のユーザーレベルでの人的交流等を行い、当該技術等の国際的な普及を促進します。
また、国際的な普及展開を通じて、我が国の電波産業の持続的な発展及び技術的プレゼンスの向上、国際市場における我が国の競争力の強化を図ります。
3.周波数の国際協調利用促進事業案件の一覧表
(1) 気象・防災プラットフォーム技術の国際協調利用促進
案件 | 概要 |
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気象レーダーシステム | 固体素子型気象レーダーシステムについて、諸外国での実用化に向けて、海外で実証等を行う。 |
雨量レーダーシステム | 固体素子型雨量レーダーシステムについて、諸外国での実用化に向けて、海外で実証等を行う。 |
(2) 空港交通システムの高度化技術の国際協調利用促進
案件 | 概要 |
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地上型衛星航法補強システム(GBAS) | 次世代の航空機着陸誘導システム(GBAS)について、諸外国での実用化に向けて、海外における導入実証を行う。 |
(3) 5Gシステム関連技術の国際協調利用促進
案件 | 概要 |
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5Gシステム | 海外においてO-RAN、vRANを用いた5G通信網構築およびローカル5Gに関する調査・実証を行う。 |
(4) 地上デジタル放送及び4K・8K放送技術の国際協調利用促進
案件 | 概要 |
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地上デジタル放送 | 地上デジタル放送日本方式採用国において、地上デジタル放送への移行、普及促進、高度化に向けた検討等のための技術支援、人材育成、調査及び実証等を行う。 |
(5) 安全運転支援システムの国際協調利用促進
案件 | 概要 |
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安全運転支援システム | 世界に先駆けて実用化し、導入・運用に関して豊富な実績・ノウハウを有する、760MHz帯V2X(Vehicle to Everything)※通信を活用した安全運転支援システムについて、海外で実証・標準化対応等を行う。 |
※V2X(Vehicle to everything):自動車と自動車(V2V:車車間通信)や、自動車とネットワーク(V2N)など、自動車と様々なモノとの間の通信の総称。
周波数の国際協調利用促進事業の適正な実施のための評価体制
周波数の国際協調利用促進事業は電波利用料を財源としていることから、その実施に当たり透明性・実効性を高めるため、「周波数の国際協調利用促進事業の評価に関する会合」(以下「評価会」という。)を開催し、各案件について、以下の評価を行います。
-
(1)
予算要求段階における新規案件の企画・立案に当たり、実施の必要性及び実施可否等を判断するために実施する評価(事前評価)
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(2)
企画・立案された案件に対して行われる提案を採択する評価(採択評価)
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(3)
実施中の案件について、活動の実施状況及び次年度の実施計画等が効率的か否かに関する評価(継続評価)
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(4)
案件の終了後に、当該期間を通して得られた成果について実施する評価(終了評価)
なお、各評価における具体的な評価の観点は以下のとおりです。
- <事前評価>
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- 目的が妥当であるか
- 手段が妥当であるか
- 予算額が妥当であるか
- 上記を踏まえ、総合的に有益と考えられるか
- <採択評価>
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- 手法が優れているか
- 実施計画が効率的に組まれているか
- 実施体制が適切か
- 到達目標等の設定は妥当か
- 相手国の状況、課題等が把握されているか
- 上記を踏まえ、総合的に有益と考えられるか
- <継続評価>
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- 実施年度の目標がどの程度達成されたかどうか
- 今後の実施計画及び体制等が妥当か
- 上記を踏まえ、総合的に適切に実施されているかどうか
- <終了評価>
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- 事前に設定した成果目標に対する達成度
- 実施体制が妥当であったかどうか
- 資金の使用が効率的であったか否か
- 国際標準の技術基準への反映がなされた(なされる見込み)かどうか
- 上記を踏まえ、総合的にみて有益であったか否か
評価会の構成員一覧(五十音順、敬称略)
氏名 | 所属 |
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牛尾 知雄 | 大阪大学大学院 工学研究科電気電子情報工学専攻 教授 |
川西 哲也 | 早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 電子物理システム学科 教授 |
児玉 俊介 | 一般社団法人電波産業会 専務理事・事務局長 |
眞田 幸俊 | 慶應義塾大学 理工学部 電子工学科 教授 |
常味 高志 | 独立行政法人 日本貿易振興機構 海外ビジネスサポートセンター 次長 |
過去の評価会での議事概要
(1) 事前評価
平成29年度(平成28年7月29日及び平成29年3月2日開催)
平成30年度(平成29年7月)
令和元年度(平成30年7月31日開催)
令和2年度(令和元年7月8日開催)
令和3年度(令和2年10月7日開催)
(2) 採択評価
平成29年度(平成29年10月13日及び11月7日開催)
平成30年度(平成30年6月7日及び7月31日開催)
令和元年度(平成31年2月15日開催及び令和元年12月にメール開催)
令和2年度(令和2年3月にメール開催)
(3) 継続評価
平成30年度(平成30年2月9日及び7月24日開催)
令和元年度(平成31年2月13日、15日及び令和元年7月8日開催)
令和2年度(令和2年3月にメール開催)
令和3年度(令和3年3月にメール開催及び令和3年10月28日開催)
令和4年度(令和4年3月及び8月にメール開催)
令和5年度(令和6年2月9日開催及び2月にメール開催)
(4) 終了評価
平成29年度(平成30年6月7日開催)
令和5年度(令和6年2月9日開催)